大前教授インタビュー
クルマが“クルマ”じゃなくなる未来が、走り出している。
新たな技術が、クルマに新たな価値を生む。
——“オンデマンド型自動運転”とは、どのような技術なのでしょうか?
「これは2000年頃からやっている研究なんですが、簡単に言うと、携帯電話でクルマを呼び出すと自律的に迎えに来て、目的地に移動し終わったら車庫や駐車場に自律的に戻っていくシステムのことです。
このシステムは、バスや電車などの公共交通機関との連携がとりやすいんです。郊外にいくと、家からバス停まで1km以上あるという場所も珍しくないですよね。しかも当然、バス停に駐車場はない。だから、クルマで行こうにも行けない。そこでこの技術が役に立つんです。
家からバス停や駅までクルマで移動して、到着したらクルマから降りる、するとクルマは自律的に駐車場を探して駐車したり、家の車庫に戻っていったりするわけです。乗り捨てOK。これなら、運転が苦手なご高齢の方であっても、安心して飛躍的に行動範囲を広げることができる、これまでのクルマとは違う、クルマの新たな利用価値を生み出す技術です」
——センサーによる車車間の情報共有を活用した“高密度隊列走行”は、どういった技術で、どんなメリットがあるものなのでしょうか?
「こちらは、“人間にできないことを実現して価値を生む技術”、とでも言えばいいでしょうか。
自動車間でセンサー情報や、車両運動情報、ドライバー入力情報を共有することで、高密度で、安定した隊列走行を実現します。そのメリットとしては、第一に圧倒的な交通量の増大があげられます。
人間の能力では、1時間に2000台の交通量が限界の道路があるとします。高密度隊列走行は、極度に短い車間距離での走行が可能なため、その交通量を3倍にもできてしまうんです。
3倍ということは、1車線で3車線分のクルマを通すことができるということです。これが実現すれば、渋滞も解消されるでしょう。
また、高密度で走行するため、空気抵抗が減り燃費の向上につながり、衝突安全性も確保できるというメリットもあるんです」