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H2Lインタビュー

人の手を外部から操作する「PossessedHand」とHack Lifeのススメ

研究開発から製品化へ。まったく新しいインターフェースを作るという挑戦

チーフリサーチャーの玉城絵美氏。開発のきっかけは些細なことからだが、追求していくことで新しい可能性が広がった、という。 チーフリサーチャーの玉城絵美氏。開発のきっかけは些細なことからだが、追求していくことで新しい可能性が広がった、という。

開発のきっかけは、玉城氏が入院した時に、ベッドの上にいても外の世界に触れられる仕組みがあれば、と考えたことだ。

その後、筑波大学大学院、東京大学大学院の博士課程で、ロボットハンドコントロールのための電子回路設計や衝突回避のプログラム研究に携わりながら、ロボットハンドの原理を利用して、機械と連動させて手に物体の感触を与える何かができないかを考えていたという。

「ある時、研究室の後輩の岩崎氏と体に微弱な電気を流す遊びがきっかけで、人の手をロボットハンドのようにパソコンなどの外部から操作することができるのでは、と考えたのが始まりでした」(玉城氏) 

研究開発段階で「TIME」誌も注目

人の手を外部から操作するというPossessedHandのアイデアが浮かんだ玉城氏は、回路基板を組んでプロトタイプを製作。岩崎氏も、実験の被験者を探したり電極ベルトの開発を手伝ったりしながら支援していた。

PossessedHandの内容を論文で提出すると海外から高く評価され、2011年9月には米「TIME」誌の「The 50 Best Inventions」の一つに選出されるなど、開発段階から注目を浴びた。多くの研究者から装置の要望があり、本格的な製品化のために会社化を決意し、当時は理化学研究所脳科学総合研究センターに勤務していた岩崎氏らとともに2012年7月にH2L株式会社を設立した。 

製品化のために「安全性」を最も考慮した

ベルトを腕に巻いている様子。準備から利用できるまで10分程度。 ベルトを腕に巻いている様子。準備から利用できるまで10分程度。

本格的にPossessedHandの研究開発と製品化を進め、2013年2月に大学や研究機関などを対象に販売を開始した。販売できる製品としてのクオリティを作り上げるために、開発では「安全性」を最も考慮したという。

「ソフトとハードの両方からあらゆる状況を想定して開発しました。例えば、過負荷な電流が流れたら停止したり電気刺激の速度を制御したりする仕組みなど、部品の選定やソフトウェアのインターフェース、通信のプロトコルといったほぼすべての要素で安全が確保できるように心がけました。動作確認のために、かなりの時間を費やしました」(岩崎氏)

PossessedHandのハードはArduinoを利用しているため、Bluetoothモジュールを使って無線通信も利用可能だ。しかし当時の仕様では不正アクセスの可能性もあるため、無線ではなく有線でハードをつなぐ設計とした。アプリの画面も、直感的に使えるよう機能やインターフェースをシンプルに仕上げている。こうした、安全性と操作性を重視する姿勢の根底には、一部の研究者だけではなく、誰でも安心して使えるユーザー体験を提供したいという二人の思いがあった。

人の触覚を刺激する新しいインターフェースという発想

インタビュー時に、実際に操作している様子。パソコンでクリックするだけで、指定した指を動かすことができる。 インタビュー時に、実際に操作している様子。パソコンでクリックするだけで、指定した指を動かすことができる。

PossessedHandを見た多くの人は、リハビリなどの医療向けの利用を想定するかもしれない。海外では、脊髄損傷で筋肉と脳との電気信号接続がうまく届きにくい人に対して、動く方の手の信号をコピーして動かない手を動かすことを目的とした装置があるという。しかし、医療という限定的な利用だけではなく、PossessedHandはこれまでにない新しいユーザーインターフェースだと二人は考えている。

「コンピュータから人間を操作するという視点で考えると、例えばVR(バーチャルリアリティ)にPossessedHandを応用すれば仮想物体を触ったときに、自分の手が震えて実際の物体を触った感覚を与えることができます。琴などの複雑な指の動きが求められる演奏も、指を動かすタイミングを知らせることで演奏を補助するアプリを開発するなど、新しい発想を生み出すことができます」(岩崎氏)

楽譜データをプログラムした情報をPossessedHandから手指に伝えることで、演奏の正確さが向上することも研究で実証されているという。「職人などの匠の技をトレースしてそれを指に伝えることができれば、マトリックスの世界のように特定のスキルをインストールする体験ができるかもしれない」と、未来の可能性を岩崎氏は指摘する。

近い将来には一般ユーザー向けの製品化を計画しており、「現在は、研究開発と成果の蓄積を行っている段階。時期がきたら広く多くの人に使ってもらいたい」と二人は語る。 

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