H2Lインタビュー
人の手を外部から操作する「PossessedHand」とHack Lifeのススメ
誰もが、ハッキングを日常化する楽しさを知ってもらいたい
PossessedHand以外にも、「スマートネイル」と呼ばれるつけ爪の開発・販売も行っている。機器を体に装着することに対して抵抗感を抱く人はいまだ多い。PossessedHandのように電気が流れるものを身につけるのはなおのことだ。そこで、機器を身につける抵抗感を少なくする取り組みとして、ギャルからヒントを得たのがスマートネイルだ。
「コンセプトは光るつけ爪です。ネイルをする時に爪を少し削って、コイルとつけ爪を一緒に装着します。コイルはSuicaなど電子マネーの支払い装置に反応して光る仕組みで、オシャレ感覚で楽しむことができます。一度つけたらお風呂にも入れますし、3週間程度つけっぱなしでも大丈夫です。好きな時に、リムーバーで外せます」(玉城氏)
スマートネイルも、将来はVR上で仮想物体に近づいたら爪が震えて触った感触が得られるようにしたいという。「指や手を“ハッキング”することの抵抗感を無くす方法だと考えています。自分の爪の一部にしてしまうので、まさに“ハーフインプラント”と呼べるものかもしれません」と玉城氏は語る。
H2Lという会社の名前の由来は、「Happy Hacking Life」の頭文字から取っている。
つまり、誰もが気軽にデバイスを常に身につけたりするように、日常をハッキングすることをより身近に感じるような生活を通じて、人の生き方に新しい発見や楽しさを提供することが目的だという。人の手をハッキングしてコンピュータから操作できるようにしたPossessedHandも光るつけ爪のスマートネイルも、根底にあるのは同じものなのだ。
誰もが何かを作れる時代
二人は、研究開発以外にも、半年でラピッドプロトタイピングについて学ぶ初心者向けの「プロトタイピング講座」という少人数講座も開催している。既に2期を終了し、実際に製品化を目指す人や、講座で開発したものをもとに論文を提出した人もいるという。参加者は高校生から社会人まで幅広い。こうした講座を通じながら、研究の面白さやものづくりの楽しさを広めている。
「誰もが作りたいものを開発できる時代。色んな人がそれぞれで開発を行なうことで面白い産業が生まれるのではと個人的には思っている」と岩崎氏は語る。もちろん、量産体制を作るには規模の大きさは影響するが、クラウドファンディングなどを通じたリーンハードウェアの環境など、小規模でもできることの可能性は広がってきているという。
研究と起業がもっとシームレスになっていく
玉城氏は、研究者としても日々過ごしている。岩崎氏もかつて研究の分野にいて、現在は事業を展開している立場だ。こうした、研究からものづくり、そして起業という形も今後増えてくるのではと二人は話す。
「研究者は、自分で発案してものを作り、社会に価値を提案するという意味では起業に通じるものがある。いまや、研究と起業はシームレスになっていると思います。逆に、ものづくりの分野から研究へと進む人も出てくるかもしれません。研究とものづくりの境目がなくなり、相互の人材が交流したり分野を横断したりする時代が来ると、新しい面白さが見いだせるかもしれません」(岩崎氏)