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FabLab Japan発起人田中浩也インタビュー前編

一人一台3Dプリンタ社会は来るか?─次世代エンジニアのありかた

各地に広がりつつあるファブラボの日本における発起人・熱心な推進者であり、慶應義塾大学環境情報学部准教授としてソーシャルファブリケーションを中心とした新しいものづくりの形を研究する田中浩也さん(工学博士)。
2013年8月には第9回世界ファブラボ代表者会議(FAB9)を実行委員長として横浜で開催した。世界中からファブラボ関係者が集結し、経済産業省や総務省、国際協力機構(JICA)、さらにはRoland DG、東芝、富士通、岡村製作所、GCC、アドビシステムズ、ソニーコンピュータサイエンス研究所などさまざまな立場の参加者がファブラボについて議論を交わすなど、ファブラボは草の根活動から行政や自治体、企業までを巻き込んだムーヴメントにシフトした。その中心にいる田中さんは日本のものづくりのありかたをどう見ているのか。

3Dプリンタを自分たちで作って学ぶ

横浜市の馬車道近くにある赤レンガ造りの建物「北仲ブリック」の中に通称「スーパーファブラボ」と呼ばれる研究施設がある(4月末から別の建物へ移動)。3月に開催されたワークショップ最終日、地元企業のエンジニアや自治体関係者、学生で賑わう中心で、9台の真新しい3Dプリンタがミロのヴィーナス像を出力していた。

3Dプリンタを作ったのは横浜企業経営支援財団(IDEC)が主催した3Dプリンタワークショップの受講者で、そのほとんどは地元のメーカー企業の社員だ。ワークショップでは6回にわたって、3Dプリンタの仕組みから構造、システムを学び、自らの手で3Dプリンタを作り上げた。

このワークショップを実際に主導したのは、第一線で活躍するエンジニアでありファブラボ関内でディレクターも務めるSHC設計の増田恒夫さんだ。

当初、3Dプリンタに関する勉強会を検討していたIDECが田中さんと増田さんに相談した際に、既製品を購入して使い方を学ぶ形式ではなく、「横浜発3Dプリンタ」を作ることを提案したのがきっかけだったという。

「補助金を使って3Dプリンタを導入してみたけどうまく使えないし、材料費が高くて維持もできない、というのが今の日本の製造業と3Dプリンタの正直な現状だと思います。これはよくないという話を以前からしていました。

そこで増田さんが開発した3Dプリンタのオリジナルキットを使って、これを実際に組み立てるワークショップを開催し、企業の方に参加して学んでもらって機構や仕組み、壊れたときの対処法を理解した上で、持ち帰ってもらえば、現状を変えることができるのではないかと思ったのです。

自分で拡張や改良ができるようになることが、このやり方の最大の利点です。既製品ではこれはなかなかできません。その延長に「横浜発の3Dプリンタ」が生まれてくるのではないかという期待もあります」(田中さん)

3Dプリンタを学ぶ方法として座学ではなく、実際に自分たちで作ってみるという発想はファブラボらしい視点だ。 

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