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FabLab Japan発起人田中浩也インタビュー前編

一人一台3Dプリンタ社会は来るか?─次世代エンジニアのありかた

毎日iPhoneケースを3Dプリンタで作る人なんていない

米粉を材料にして食品が出力できる3Dプリンタ「Kitchen 3D Printer」

「私がファブラボを始めた頃から一部関係者の間で『一家に一台、3Dプリンタが普及するかもしれない』と夢のように語られていたんですけど、このままではそれは無いなと去年ぐらいから思うようになりました。よく考えれば、毎日ひたすら自宅で3DプリンタでiPhoneケースを作り続ける人なんてめったにいないですよね。

それでも家庭レベルにデジタルファブリケーション技術が普及していく夢はあって、それをかなえる一つの方法として、調理器具と3Dプリンティングの合体というのが一番可能性が一番高いんじゃないかと考えたのです。そこで、米粉を素材に使った食品用の3Dプリンタを学生と作ったりしています。

ただ、これを作ってみて、また認識が変わりました。いま、日本をはじめとする先進国は社会全体が“所有”から“共有(シェア)”の時代へと移ってきています。車も、『シェアカ—』が出てきていますよね。であるならば、これからは、家電も、『シェア』になっていくのではないかと思うのです。

つまり、“一家に一台”ではなく、“ひとつのコミュニティに一台”新しい機械があって、それを共同で使うのです。共同で使う機械が置いてあるのが、ファブラボをはじめとする市民工房であればよいと思います。だから“一家に一台”というのは、間違った目標だったのです。こうしてやっと、よりよい目的と社会像にようやく到達しました。」 

街の中に研究室を構え、市民と近い場所で学ぶ

学生と社会人が関わりあって研究できるのがスーパーファブラボのメリットだ。 学生と社会人が関わりあって研究できるのがスーパーファブラボのメリットだ。

田中さんの活動拠点は、学部のある湘南藤沢キャンパス(SFC)だけではなく、馬車道のスーパーファブラボだという。

というのも、スーパーファブラボはFAB9のときについた通称で、正式名称は「慶応義塾大学ソーシャル・ファブリケーション・ラボ横浜拠点」といい、れっきとした慶應大の施設だ。FAB9が終わった後も田中さんの研究室として運営されている(4月末から別の建物に移動)。 

「湘南藤沢キャンパス(SFC)のほうでは基礎的な技術の研究を行い、横浜の研究拠点では、社会的な実験を行う。その2つを循環させていきたいと思っているのです。新しい技術は、最初は未熟なものです。3Dプリンタだってそうです。しかしそれを、社会のなかで磨き、問題点を発見し、議論し、改善していくなかで育てていく。そういうマインドを持っていたいと思っています。」

キャンパスを飛び出して市街地に研究室を置くことのメリットは他にも多いと田中さんは語る。

「大学の研究って社会と関係ないところに向かった結果、市民生活と関係ない内容になることもあるのですが、そうではなく市民に近い場所で『暮らし』をよく見ながら、社会に役立つことをしたいと思ってここに拠点を構えました。非常に良い環境だと思います。」

ファブラボ関内ディレクターの増田恒夫さん。増田さんのような第一線のエンジニアから学ぶことは、学生にとって非常に大きな意味を持つという。 ファブラボ関内ディレクターの増田恒夫さん。増田さんのような第一線のエンジニアから学ぶことは、学生にとって非常に大きな意味を持つという。

「大学から1時間ぐらいかかる場所にあるので、初めのうちは学生はここまで来るのが大変だったと思います。ただ、ふたを開けてみると、ここに出入りするさまざまな人──それこそ増田さんのような社会の中にいる優れた大人から学ぶ機会があり、社会の動きを感じながらデジタルファブリケーションを研究できるようになって非常に良いと学生自身が言うようになったんです。

 学生以外の大人がなぜこんなにファブ活動に情熱を持っているのかや、社会がどう変わろうとしているのかなど、キャンパスで受ける講義以上の勉強ができていると思います。キャンパスでの『まなび』と、街での『まなび』が良い相乗効果をあげています」

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