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FabLab Japan発起人田中浩也インタビュー後編

街中の誰もがものづくりをする社会「ファブシティ」

工作機械も自分で作る時代「FabLab 2.0」

いくつかのファブラボでは既存の工作機械を導入してものづくりをする段階から、自分たちで工作機械を作る段階に移行しようとしている。

「既存の工作機械を買ってきて何かを作るという段階を“FabLab 1.0”といい、工作機械も自分で作るという段階を“FabLab2.0”とファブラボでは呼んでいます。FabLab 1.0では既存の工作機械に発想も作られるものも制限されるし、どのラボも結局同じものしか作れなくなっちゃうかもしれない。

そこでFabLab 2.0では工作機械も自分たちで作り、素材も自分たちらしいものを使って、よりユニークなラボの特色を出せるようになることを目指しています。
海外では着々とその段階になっているので、日本もそのフェーズに向けて進めていきたいと考えています」 

ファブラボで開発されるデジタル工作機器の開発には、ハードウェア設計、ソフトウェア設計、素材開発、ITの4分野のエキスパートが必要だという。

「畑の異なる専門家をつないで異業種チームを作り、独自の機器を開発できるような、異なる分野のエンジニアやデザイナが出会う場としてファブラボは機能してほしいと思います。その素地はできていると思うし、ここからが日本のファブラボが力を発揮していくフェーズです。」

街中がものづくりに参加するファブシティ構想に向けて

今年7月にスペイン・バルセロナで開催される「第10回世界ファブラボ代表者会議(FAB10)」。その名の通り、10年目にして10回目の開催となる。 今年7月にスペイン・バルセロナで開催される「第10回世界ファブラボ代表者会議(FAB10)」。その名の通り、10年目にして10回目の開催となる。

今年7月に開催される世界ファブラボ代表者会議のテーマは“From FabLabs to Fab cities(ファブラボからファブシティへ)”だ。

これはファブラボだけでなく、街中の他のものづくり施設と連携して、街全体をファブ化することで、地域全体の創造性を高めていくという取り組みで、既にFAB10の開催地バルセロナでは大学やファブラボ、ファブカフェ、森の中にある林業のファブラボ「Green FabLab」などを繋ぐ取り組みが進んでいる。

田中さんが自分の研究室をキャンパスではなく横浜市の街中に置いたのも、ファブシティを実現するためには中心に大学が必要だと感じたからだ。

「学校って何なのっていうのをラディカルに考え直さなければならなくなってきていて、大学もネットで授業が受けられるようになり、課題も出せるなら大学に来なくてもよくなっています。ただ、学校に来なくていいからといって、家にずっといればいいというわけでもない。じゃあ、どこに行けばいいかというと面白い人がいる街に出ればいい。日々、街の中でインスピレーションを受けるというのも創造性を高めていくという面で学びだと思うんですよ」

田中さんも横浜をファブシティにしたいと考えている。

「人口200万人都市というのが世界で注目されています。バルセロナやアムステルダム、コペンハーゲン、日本では福岡、仙台、少し人口は多いけど横浜。どの都市にもクリエイティブな街の力を喚起させる何があると思います。海外のこういう街では、『住む場所』と『働く場所』と『遊ぶ場所』を一致させようと努力しているんです。

そうすると、コンパクトながらいろいろなアクティビティが重なり合って、衝突し、化学反応が起きて、面白い文化ができてくる。そこから発明力の高い産業も生まれるはずです」

既に自治体もファブシティ構想に興味を持ち、さまざまな形での協力があるという。

「ファブには文化と産業の両面があると思っています。私はよくサッカーでたとえるんですけど、サッカーをやらない国の人に、サッカーボールを売ろうと思っても、誰も買いません。それと同じで、作りたいという人がいないところに3Dプリンタを置いても誰も使いません。文化の上にこそ産業が立ち上がるのです。横浜にはその両方のポテンシャルを感じています。企業も市民と繋がりたいという意思は持っていて、すごく意識が高いと思っています」

ファブシティ構想も第一歩として、田中さんは、「フューチャーセンター」と「ファブラボ」も一体化させたいという。フューチャーセンターとは、起業や自治体が地域の中長期的な課題解決を目的に、さまざまな関係者を集めてディスカッションするための施設で、欧州で発祥した取り組みだ。

「横浜にはフューチャーセンターがいくつかあって、活発な取り組みが進められています。
一方、アイデア出しやディスカッション、異業種交流で終わっているものも多いと聞きます。そこにファブを入れることで『みんなで理想を集めて何か作ろう』ということになると面白いと思います。

それは街のためにもなるし、企業にとっては本来のビジネスとは、近すぎず、遠すぎずの関係を保ちつつになりますが、街全体の創造性を高めるためのプロジェクトを本来の事業とは別に外で持つことで、結果的に本業も活性化すると思うんです。そういう新しいサードプレイスをつくりたいのです。大学、企業、市民の3つが協力して」 

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