チームスケルトニクス・白久レイエス樹インタビュー
ものづくりはチーム力——スケルトニクス開発の根底にある組織づくり
大事なのは組織のマネジメント
プロトタイプ開発と同時に、組織のマネジメントにも気をつけたという。
「ものづくりの人たちは、自分でなんでも作ってしまおうとしますが、それだとメンバーのリソースにロスが生じます。僕らは、初めからチームで作ることを意識し、ロボコンの本番に向けて新入生にしっかりと教え、自分たちのサポートができたり、自分が手を動かさなくても組織が自走したりするような組織づくりにしなければと考え、行動しました」(白久氏)
半年という時間軸の中、自分たちで闇雲に作るのではなく、チーム全体でゴールに向かい目標を達成することを重視した。そのために、後輩の育成に力を入れることで結果としてチームの成長率が高まり、ゴールへと辿り着くことができる。チームリーダーとなった白久氏は、ほとんど設計には携わらず、監督としてチームのマネジメントだけに力を入れてロボコンに取り組んだという。
「前年度に自分が手を動かした結果、手が空いてなにをしていいかわからない状態のメンバーがいたことがきっかけでした。その時の経験から、ものづくりは個人ではなく、チーム力が問われるものだということを実感しました」(白久氏)
「ロボコンは、アイデアではなくマネジメント」だと白久氏は語るように、斬新なアイデアや最先端の技術を駆使するのではなく、優勝へとたどり着くための組織づくりと本番までの開発と練習をどれだけ重ねてきたかが勝負の分かれ目といえる。
自分たちでロボットを作りたいという思いから、スケルトニクスの開発へ
「ものづくりはチーム力」——この考えは、いまのチームスケルトニクスにもつながる哲学だ。ロボコンの経験を活かしてもっとチームでものづくりをしたい、自分たちが作りたいロボットを作りたいという思いから、阿嘉氏、中野氏とともにスケルトニクスの開発をスタートした。
「阿嘉が動作拡大型のロボットを作るという構想を持っていたので、彼の提案がきっかけでそれを作ってみようと考えました。電力ではなく人力を活用する制御機構が実現したのも、ロボコンの経験を通じて得たアイデアと、プロトタイプ開発を通じて改良を積み重ねてきた結果生まれたものです」(白久氏)
2010年から開発を行ったスケルトニクスは、地元メディアや沖縄のイベントや科学作品展で注目を浴びるようになった。ニコニコ動画などの動画共有サイトに投稿したことでさらに人気が増し、2012年4月に幕張メッセで開催されたニコニコ超会議に出場した際には、スケルトニクスのブースに多くの参加者が集まってきたという。
「メンバーそれぞれが進学することもあり、本来はスケルトニクスを作って終わるはずでした。しかし、さまざまな方々からお声をかけていただくようになり、スケルトニクスを通じて受託開発などの依頼がきたり、スケルトニクスの展示やデモンストレーションなどをしたりする機会が増えてきました。そこで本格的にものづくりに取り組もうと考えて2013年10月に法人化しました」
自己資金で会社を設立したチームスケルトニクス。この3月で東京大学大学院新領域創成科学研究科の修士課程を修了した白久氏は、4月からフルタイムで会社に専念し、イベントへの積極的な参加や受託開発を行っていきながら、チームで新しいものづくりを行っていきたいという。