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誰もが関われる次世代の義手を目指して——handiiiの開発と起業への道のり

ネット時代が可能にした遠隔コミュニケーションと開発環境

2013年5月ごろにhandiiiの開発に着手してから8月のジェームズダイソンアワード2013への応募、11月のMaker Faire Tokyo2013出展と、数カ月しか開発期間がない中で奔走した3人。しかも3人とも企業に勤め、かつ東京と大阪に離れてやりとりする中での開発だったという。

「日々のメールのやりとりと、毎週2回のオンラインMTGで顔を合わせてやりとりをすることで、なんとか開発することができました。山浦からの紹介で私と小西が初めて顔を合わせたのがSkype越しだったという形も、いま考えると不思議ですが、山浦が普段から仕事をしている人と聞いていたので信頼できる人だと思いました。もちろん実際に会ってのやりとりが一番スムーズですが、それができる環境ではなかったので、自分たちができる最善の環境のなかでやるしかないと考えていました」(近藤氏) 

exiii CCO兼Co-Founderの小西哲哉氏。「デザイン視点から、誰もが使いやすい義手の設計をしていきたい」と語る。 exiii CCO兼Co-Founderの小西哲哉氏。「デザイン視点から、誰もが使いやすい義手の設計をしていきたい」と語る。

山浦氏と小西氏は、同じ会社の機構部とデザイン部でものづくりをしていた者同士。同じ大学で過ごした近藤氏と山浦氏も設計と機構に関する知見や共通認識があるなど、それぞれの得意分野を活かしながら開発を行っていった。

「2人ではなく3人というチーム構成だったからこそ、意見が割れても最終的に多数決を踏まえて納得のいく形で決断することができました。仕事のやり方などは互いに信頼関係とそれぞれの仕事の仕方の認識のすり合わせができていたので、ある程度円滑に進めることができました」(近藤氏) 

ジェームズ・ダイソンアワード、Gugenの受賞

手前から二つめのhandiiiには、ジェームズ・ダイソン氏本人からサインをもらったという。 手前から二つめのhandiiiには、ジェームズ・ダイソン氏本人からサインをもらったという。

デザインとエンジニアリングの両方の側面から筋電義手を開発したことが評価され、ジェームズダイソンアワード2013では世界650作品ものエントリーの中から2位を受賞。受賞イベントでは、ジェームズ・ダイソン氏と挨拶を交わし「ハードウェア分野の最先端で取り組んでいるダイソン氏本人から励まされたことが嬉しかった」(山浦氏)。大きな自信にもつながったという。

11月のMaker Faire Tokyoでは実際に操作できる実物を展示し、さらに12月に行われた「未来のふつう」となるものづくりを表彰するコンテスト「Gugen 2013」にも応募して、200点を超える応募作品の中からみごと大賞を受賞した。

「Gugenに出展したことで、ものづくりに携わるさまざまな人とのネットワークができました。特に、投資家やオピニオンリーダーの方々からは、投資家やユーザー目線でのコメントもいただくなど、良いフィードバックを得ることができました」(近藤氏)

受賞を通じたhandiiiの手応え、そして起業へ

exiii CTO兼Co-Founderの山浦博志氏。「誰もが手に取ることができる義手というコンセプトのための、最適なエンジニアリングや技術の組み合わせを模索していたい」と語る。 exiii CTO兼Co-Founderの山浦博志氏。「誰もが手に取ることができる義手というコンセプトのための、最適なエンジニアリングや技術の組み合わせを模索していたい」と語る。

ジェームズダイソンアワード2013の入賞、Gugen2013の大賞受賞による自信とhandiiiに対する期待と可能性を確信した3人は、真剣にhandiiiの開発に取り組むためにそれぞれ会社を退職し、現在は会社設立のための準備をしているという。

「3人とも20代後半という年齢。何か新しいことをやるなら今しかありません。評価をいただいたhandiiiを実用化するためにも、3人が同じ場所にいてフルコミットでやらなければできないと感じました。実は、1年以上一緒にものづくりをしてきましたが、このインタビューの前日に初めて3人が揃って作業をする環境が整ったんです。実際に顔を合わせることで、色々なことが今まで以上にスピーディーに進んでいるという実感があります」(近藤氏) 

筋電センサーをつけ、handiiiを操作している場面。筋電センサー装着から数秒程度で動かすことができた。 筋電センサーをつけ、handiiiを操作している場面。筋電センサー装着から数秒程度で動かすことができた。

handiiiのアイデアから約1年で起業へと決意できた背景には、この数年のものづくりの環境の変化も大きいという。SNSやオンラインツールなどを駆使してコミュニケーションが可能になったことを、身を持って実感した3人。他にもArduinoの登場やさまざまなソフトウェアのAPIの公開、ライブラリの充実など開発環境の充実に加えて、スマートフォンの浸透など「少人数でも新しいチャレンジがしやすい環境」と近藤氏は語る。

さらに、ハードウェアの開発に関して、企業で学んだことは大きいと3人は指摘する。

「ものづくりをする上で、デザイナーとエンジニアの意思疎通は大きな要素。それを企業で学べたのは大きい。大きなメーカーは、ものづくりをしっかりと体系だって知ることができる良い場所」(小西氏)

近藤氏も、ものづくりの分野では学生からそのまま起業するのは勧めないという。他部署の人とつながったり、工場の人と知り合ったりしながら知識を得たことが今に生きていると、企業で働くことの意義について語った。 

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