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サイバーステップ 佐藤類インタビュー

開発に5年! ポータブルスタジオ「KDJ-ONE」誕生の軌跡

ソフト開発とハード開発の違い

それでも、このサイズにこれだけの機能を詰め込むのは非常に難易度の高い開発作業だった。もともと自社のゲーム内でBGM作曲ツールを提供していた経験もあり、ソフト開発は順調に進んだ。しかしハード開発では、パーツ納入にかかる時間、為替相場変動による調達コストの変化、実物がなければ検証できないテスト作業、その修正にかかる時間など、これまで経験したことのない問題に突き当たる。

「ある人に教えてもらったんです。ハードとソフトは考え方変えないとだめだと。ソフトは天才一人の力技が効くけど、ハードは効かない。仕入れからテストから、綿密な計画立てなきゃって言われて。バグがあったら直すようなソフト的なやり方じゃだめだ、っていうのはやりながら学びましたね」 

左がプロトタイプ最終版で、右は2011年にNAMMショーで発表した際のもの。さらにソフトウェアの原型としてオンラインゲームのゲーム内BGM作曲ツールがあり、このツールの名称「KDJ-ONE」が製品名の由来となっている。 左がプロトタイプ最終版で、右は2011年にNAMMショーで発表した際のもの。さらにソフトウェアの原型としてオンラインゲームのゲーム内BGM作曲ツールがあり、このツールの名称「KDJ-ONE」が製品名の由来となっている。

クラウドファンディングへのチャレンジ

こうして4年の歳月を経てプロトタイプが完成。海外展開前提のエンターテインメント市場向けの製品ということもあり、2度目の発表の場もアメリカを選んだ。しかし今回は「Kickstarter」や「Indiegogo」といったクラウドファンディングのプロジェクトとしてだ。

「僕らが上場したころは、資金調達するには増資するか借り入れるかしかなく、1000万円のキャッシュを手にするには、利益率5%の事業なら2億円の売上が必要で、税金取られると手元にそんなに残らない。それを製品が出来上がる前に調達できるっていうのは、2億とか3億円の売り上げと同等の価値があるわけで、すごく助かりますね」 

クラウドファンディングでは、バッカー(支援者)からの反応はマーケティングにもなり、注目を集めることでプロモーションとしても期待できる。「そういう点では失敗したとしてもそれはいい経験なんで、得るものが多いですよね」 クラウドファンディングでは、バッカー(支援者)からの反応はマーケティングにもなり、注目を集めることでプロモーションとしても期待できる。「そういう点では失敗したとしてもそれはいい経験なんで、得るものが多いですよね」

また、サイバーステップでは人海戦術で短期間に作る手法に頼らず、少数精鋭が時間をかけて作ることで、個性ある製品作りを心がけてきた。

「量産的な形ではなくシェフが1個1個ちゃんと作るという考え方なので、手間もお金もかかるんです。でもその方が出来上がったとき一定の評価をしていただける」

こうしたものづくりの進め方とクラウドファンディングの親和性の高さも、発表の場に選んだ理由のひとつとなった。 

GUGEN出展とその成果

その後、国内発表パーティーで参加者から耳にした日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2014」に急遽参加を決めたが、見事スポンサー賞を獲得。副賞は「SXSW(サウスバイサウスウエスト)出展サポート」だった。SXSW とは、テキサス州オースチンで毎年開催されている音楽関連ビジネスの総合展示会だ。

「Kickstarterやるんだったらアメリカの展示会出さないとだめですね。日本から情報発信してもアメリカでは取り上げてもらえない。ハードって手で触れないと分からないし、そういうのが重要だなって」 

「GUGEN」は製品化を前提としたプロトタイピングを技術面、資金面、企画面から支援するプログラム。KDJ-ONEはスポンサー賞の副賞として「SXSW出展サポート」を獲得した。 「GUGEN」は製品化を前提としたプロトタイピングを技術面、資金面、企画面から支援するプログラム。KDJ-ONEはスポンサー賞の副賞として「SXSW出展サポート」を獲得した。

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