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サイバーステップ 佐藤類インタビュー

開発に5年! ポータブルスタジオ「KDJ-ONE」誕生の軌跡

「KDJ-ONE」は、ハードウェアならではの高い操作性と、プロも納得するハイクオリティなサウンドを併せ持つポータブル音楽スタジオ。その機能やデザインに加え、ソフトウェア開発を本業とする会社が開発するハードウェアであるという出自や、クラウドファンディングによる資金獲得と販売のプロセスも注目を集めている。ソフト会社がなぜハードを作るのか? 上場企業がなぜクラウドファンディングを使ったのか? サイバーステップ代表佐藤類氏の「世の中にないものを作って、世の中を楽しくしたい」というものづくり哲学の中に、その答えが隠されていた。(撮影:加藤甫)

ポータブル作曲ハードウェアKDJ-ONE

KDJ-ONEは携帯型ゲーム機と見まがうボディに、タッチパネル液晶やベロシティ(強弱)対応キーボード、アナログスティック、最長10時間駆動可能なバッテリを備える。さらに、プロが使用するDAW(Digital Audio Workstation)ソフトと同等の、シーケンサ、シンセサイザ、ミキサーなど、作曲に必要な機能すべてを凝縮したデジタル作曲ガジェットだ。

最大同時発音数64音/200プリセット音色/100ドラムキットのシンセサイザ部、最大オーディオ記録容量1GBのレコーダー部、各トラック2系統+マスターエフェクトのエフェクタ部、6トラック/ピアノロールエディット可能なシーケンサ部など、その中身も本格的なスペックをそろえる。製品版の価格は799ドル(約9万5000円)を予定している(Kickstarterでの価格395ドルは大幅な赤字とのこと)。

オンラインゲームの会社が音楽ハードを作る?

開発したのは国内外でヒットとなった「GetAmped」などのオンラインゲームで知られるサイバーステップ。代表の佐藤類さんは今から十数年前、東京工業高等専門学校の学生時代に、勃興しはじめたインターネットの世界に触れた。

KDJ-ONEを開発したサイバーステップ代表の佐藤類さんは1977年生まれのファミコン世代。同社を2000年に創業、現在は全世界に200名以上の従業員を抱える企業へ発展を遂げた。 KDJ-ONEを開発したサイバーステップ代表の佐藤類さんは1977年生まれのファミコン世代。同社を2000年に創業、現在は全世界に200名以上の従業員を抱える企業へ発展を遂げた。

「当時はインターネット最大の特徴であるインタラクティブ性とリアルタイム性を積極的に使うものがあまりなかったんです。そのためそれを生かせるものとして、インターネットをファミコンにするという気持ちでオンラインゲームを作ったんです」

こうして2006年には東証マザーズに上場。2002 年にリリースされた「GetAmped」は韓国や台湾でも大ヒットとなり、現在も軸足を置くのは自社製オンラインゲームの開発と運営だ。

「受託開発には興味がなくて、世の中にないものを作って、世の中を楽しくしたいなって。で、音楽を作るポータブルなワークステーションはその当時なかったので、僕らからするとゲームもKDJ-ONEも、世の中にないものという意味で違いはないんです」 

ソフト開発とハード開発をつないだもの

当初、ハードウェア開発は外部委託したが、その開発は難航を極めた。

「当時主流だったモバイル用のプロセッサを使った開発には実績のある所に委託したんです。でもそのプロセッサを組み込み用に使おうとするとそこら中に不具合があって、全然完成しない。なので、2012年くらいからハードも社内で作ることにしたんです」

この時既にアメリカのNAMMショー(国際的な楽器見本市)で発表、予約販売を開始していたため、その返金作業などに追われながらも下した決断だった。とは言え、ハードウェアの自社開発には目算があった。2006年頃からR&Dとしてリモートアシスタントロボットなどを開発。その成果として2011年に本物のクレーンゲームをインターネット経由で遠隔操作する「Toreba」をサービスインした。

「Torebaはコンシューマ向けのハードではないんですけど、ハードの設計や開発はそこで経験していたので、KDJ-ONEの開発も意外にすんなりとできたんです」

また、3Dプリンタの登場など、ものづくり環境の低コスト化や、スマホの普及とともに価格も開発環境もこなれてきたARM系CPU評価ボード上での開発に切り替えたことも追い風となって、その後の開発は順調に進んだ。 

インターネットでクレーンゲームを遠隔操作するオンラインゲーム「Toreba」。 インターネットでクレーンゲームを遠隔操作するオンラインゲーム「Toreba」。

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