キネティックアーティスト テオ・ヤンセンインタビュー
テオ・ヤンセンが語る、3Dプリンタによって進化するビーストの可能性
材料が語りかけてくる瞬間
ストランドビーストは、クリーム色のプラスチックチューブを切りだし、折り曲げ、つなぐことでその骨格が作られている。すべては手作り。加工自体は単純作業の繰り返しだ。1日10時間以上をそれに費やすヤンセン氏。だが、そこに豊富なアイデアが生まれる秘密があった。
「3Dプリンタなどのデジタル工作機械を使っての作業も大切ですが、自らの手を使って何かを作ることも依然として重要です。手を動かすことで刺激される創造力があるからです。機械と手、要はバランスの問題なのです。
我々はどんな時代になっても機械でものを作り出すだけでなく、手を使うことを忘れてはいけません。手を使ってものを作るときには、材料と対話することになります。材料自体が語りかけてくることがある。こう作ってほしい、ああ作ってほしいと。
3Dプリンタだけに頼るものづくりはその機会を失うことになりかねない。その点は危惧しています。ものを作る人間にとっては大事なところだと思うので。
他にも3Dプリンタを使うにあたって、問題はいろいろ出てくるでしょう。そのあたりは試行錯誤しながら進んでいけばよいと思います。進化というのはそういうものですから」
3Dプリンタに見る可能性
問題を乗り越え、その先に見えてくるものがある。3Dプリンタの改良が作品の進化につながる可能性をヤンセン氏は見ている。
「残念ながら、いまのところは、3Dプリンタ作品に大きな変革は見たことがない。もっと潜在能力があるはずですし、それを引き出す努力が我々には必要です。それこそが、新しい世界を作るきっかけになります。
もっといろいろなアイデアを入れていかなければなりません。ものを作ったらそれで終わりではなく、それはさらに新しい、特別な何かを生み出す始まりなのです。結果をフィードバックして新たな進化へとつなげる。私の3Dプリンタビーストたちもそういう進化を遂げると信じています。
自分の頭の中にあるアイデアが比較的短時間で形になるということはすごいことだと思います。大変な驚きです。デジタルデータを自由に扱える時代の象徴的な出来事だと思います。3Dプリンタの普及によって私のビーストを作る人がさらに増え、ビーストたちが新たな進化の段階を迎えることを期待しています」
3Dプリンタが新たなビーストを生み出す状況をヤンセン氏は心から楽しんでいるように見えた。