キネティックアーティスト テオ・ヤンセンインタビュー
テオ・ヤンセンが語る、3Dプリンタによって進化するビーストの可能性
機械が大型化すれば、私も使ってみたい
ヤンセン氏自身も3Dプリンタによるビースト作りにも関わっている。ファブリケーションサービスの会社と提携し、3Dプリンタビーストの販売も開始した。
「オランダはデルフト市郊外のイペンブルフの丘にある私のラボ(実験室)には、自動でストランドビーストが作れる3Dプリンタがあります。小さい部品が次々と作られ、買った人はそれを組み立てるだけです。繁殖は私のラボでも始まっていると言えるでしょう。この先、3Dプリンタが大型化して、通常の大きさのビーストが作れるぐらいになれば私も使ってみたい。それはそれで楽しいと思います。ただ、別の種類の作品になりますが」
自由なものづくりは原初的な行為
プロのアーティストも利用する3Dプリンタは、一方でアマチュアとの境界線をあやふやにしている。ヤンセン氏はこの状況をどうとらえているのだろうか?
「3Dプリンタの登場によって正確なディティールの再現も可能になり、アーティストとMakersの違いがなくなってきたように感じます。もともと私はアートとエンジニアリングを同一の視点で見ていましたので、エンジニアに近いMakersに対しては、より強くそう思うのかもしれません。
メイカーズムーブメントそれ自体は特にアメリカで盛んなようですね。アーティストへも強い影響を与えているようです。アーティストの作品はお金で判断されるわけですが、Makersのそれは違います。純粋に作品としての評価だけです。だからこそ、このムーブメントは重要なのです。
自由にものを作るというのは、原初的な行為です。人々は何かを作ることで石器時代を生き延びてきました。今のメイカーズムーブメントは大昔から行われてきた行為の延長線上にあるように思います。例えば大昔に一つの村があったと仮定します。そこには多様な人々がいます。何パーセントかの犯罪者もいれば娼婦もいる。同じように、アート作品を作るMakersもいたはずです」
3Dプリンタやそこから派生したメイカーズムーブメントを高く評価するヤンセン氏。一方で危惧することもあるという。何だろうか?