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農研機構 平藤雅之インタビュー

農業を変えるオープンソースハードウェアとファブ

オープンフィールドサーバ(Open-FS)のマザーボード基板。独自に開発した基板の上にArduinoを搭載している。 オープンフィールドサーバ(Open-FS)のマザーボード基板。独自に開発した基板の上にArduinoを搭載している。

メーカーの開発スケジュールに翻弄されていた中、Arduinoなどオープンソースハードウェアの導入を真剣に検討し始めたのがリーマンショック直後の2009年だった。

「その頃のメーカーの元気のなさにとどめを刺されたときに、オープンソースハードウェアっていうトレンドが世界で広まりつつありました。ただ、その当時のArduinoは今とは比べものにならないほど頼りないスペックで、大半の人は見向きもしない状況だったんですけど、そのどうしようもないものでも周辺機器がしっかりしてくると、世の中をひっくり返す革新性があるんですよね。

僕はAppleが『Apple IIでイノベーションを起こしたのをリアルタイムで見ていたので、同じような可能性があると思い、試しにArduinoベースで試作品を作ってみたんです。Arduinoだけでは十分に性能が出ない部分もありましたが、簡単な工夫ですぐに何とかなってすぐに完成しちゃったんです。 

それまでだったらものすごいお金と時間がかかっていたものが一瞬でできて、ソフトウェアもArduino IDEという開発環境があるのですぐにできてしまって、これまでヘトヘトになるまで投入していたエネルギーとコストは何だったんだろうというぐらい簡単にできちゃったんですよね」

オープンソースハードウェアベースでの開発に切り替えた平藤さんの予想通り、決定的なプロダクトが登場するのに時間はかからなかった。

「IntelがArduino IDEをサポートしたEdisonというCPUモジュールを開発したことで、世の中の流れが大きく変わったことを感じましたね。『あんなのおもちゃでしょ』といってばかにする人がいても、世界のIntelがオープンソースのArduinoにかじを切っちゃうと、もうこっちが本流になってくる。

オープンソースの世界では、多少のトラブルにぶつかっても世界中のユーザーがネットで解決方法や情報を公開しているし、これまで一人でつまずいていた部分も一気に進められて、オープンソースハードウェアを使わない理由が無いところまで来てしまった」

オープンソース化の恩恵はマイコンだけではない。それまで生育状況を把握するためにネットワークカメラで映像を撮影していたが、廉価で仕様がオープンなカメラや特殊な光センサを組み込むのが簡単になった。それらへの給電をソフトウェアでコントロールして消費電力を抑えると、太陽電池の電力だけでも十分に稼働できるようになり、電源を必要としなくなった。

また通信環境も進歩し、状況に応じて無線LANから3G/LTE回線に切り替えられるようになった。GPSモジュールの組み込みも簡単になり、位置情報も正確に把握できるようになった。

さらにソフト開発のための開発環境に保守契約込みの高いライセンス費用を払うこともなくなり、1台当たりの製造コストが3分の1から10分の1程度に大幅に下がった。 

オープンソースハードウェアに移行する前のフィールドサーバを手にする平藤さん。 オープンソースハードウェアに移行する前のフィールドサーバを手にする平藤さん。

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