ばーちゃわーるど 亀田 誠インタビュー
「2020年東京オリンピックに参加するすべての国をもてなしたい」3Dプリンタでめざす新しい国際交流の形
旅行と模型作り。趣味をアウトドアとインドアに分けるなら、両極端ともいえる2つの趣味。ところがこれらを3Dプリンタで結びつけた人がいる。模型工房「ばーちゃわーるど」を主催する亀田誠さんだ。旅行で訪れた世界遺産を、3Dプリンタを使ってジオラマで再現。細部のディテールにこだわった作品のいくつかはさまざまな国の大使館に置かれ、国際交流の一助となっている。どんなきっかけで置かれるようになったのか? 尋ねてみた。(撮影:加藤甫)
トラベラーでモデラー
「昨年は家族でスリランカに行って、それが48カ国目になりますかね」
旅行者としてのキャリアは世界を巡った学生のときから。欧米の主要国はもちろんアフリカや南米の小国も含まれる。今はもっぱら家族旅行だが、9歳になる娘さんでさえ18カ国に及ぶという。
「旅の思い出を写真とは違う形にして残したかった。それが世界遺産をジオラマにして作ったきっかけです。モデラーとしてもフィギュアなどいろいろ作っていましたから」
当初はプラ板やプラ棒などを使い、スクラッチで作った。
「3年前、家庭用の3Dプリンタがアメリカで発売されたことを知り、すぐ個人輸入で取り寄せました。それ以来、ジオラマ作りのスピードがあがって。スクラッチで作っていた頃は半年ぐらいかかっていたのに、3Dプリンタを使うようになって大きいもので2カ月、小さいものなら1週間でできるようになりました。
でも、作品が増えすぎて置くところがなくなってきた。そこで誰か喜んでくれる人にあげちゃおうと考えました。そのとき真っ先に頭に浮かんだのが大使館だったわけです」
趣味で作ったジオラマの処理に困っている人は大勢いるだろうが、いきなり大使館に連絡という発想と行動力はすごい。
ものだから伝わるメッセージ
「大使館に『寄贈したい』と連絡したらとても喜んでくれました。模型って言葉がいらないからどんな国の人にもメッセージが伝わります。
例えば、日本人が知らない小国の人にその国の世界遺産のジオラマを見せれば、『私はあなたの国のことを知っていますよ』というメッセージが伝わる。それを喜んでくれるとこちらもうれしくなります。その後、大使館主催のイベントに呼ばれたりして、おつきあいが深まりました」
逆に、細かいところで指摘を受けたり、現地の人ならではの情報をもらうこともある。
「先日もヨルダン大使館へ行ったら、『ペトラ遺跡のここのところには赤い髪をしたおばちゃんがいつもいるんだよ』とジオラマを指差していわれました。『作れ』っていう意味かなとちょっとどきどきしました」