ばーちゃわーるど 亀田 誠インタビュー
「2020年東京オリンピックに参加するすべての国をもてなしたい」3Dプリンタでめざす新しい国際交流の形
目的にあった使い方が鍵
亀田氏は2014年にスリランカでの家族旅行の思い出をジオラマにして、コンテストで賞をとった。しかしこの作品は3Dプリンタで作ったものではなかった。
「ゾウをテーマに作ったのですが、有機物が生み出す微妙な曲線は3Dプリンタでは難しかった。データ作成の時間を考えれば、手の方が早いし、精度も上がります。コンテストへ向けた作品としては使いにくいと感じました」
目的に合わせて道具を選ぶ。ものづくりの基本だ。
「でも建築物のジオラマには3Dプリンタが合っています。寸法が大事ですから。90度のエッジをスクラッチで出すのはとてもむずかしい。これがいとも簡単に出せるのはすごい。『データを作る』ことが『打ち出す』こととイコールなので、スピード感も精度もスクラッチとは違いますね。
私には本業もあるので、平日の帰宅後か休日しか作業できない。データを作ってボタン押して寝る。朝起きるとできている。とても重宝しています。3Dプリンタ抜きで、2020年までに200個以上のジオラマを作るなんてとてもできません」
目的に合った使い方をすれば、威力を発揮するのが3Dプリンタだという。同時にデータが重要だとも。
「最近の家庭用3Dプリンタはかなり良くなりましたが、それでも精度不足は否めません。そんなときはCADデータの作り方でできる限りリカバーします。私は写真を基にゼロからデータを作りこみます。機械としての3Dプリンタは単にデータ通りにノズルを動かすだけです。結局のところデータが命です」
3Dプリンタで趣味を形に
3Dプリンタを使いこなし、国際交流の新しい形を生み出した亀田氏。メイカーズムーブメントのフロントランナーのひとりといえるだろう。若いメーカーへのアドバイスをもらった。
「『3Dプリンタがあるから何かを作ろう』という考え方は疑問です。まずは趣味とか、目的があって、そのために使う、というのが基本ですね。
例えば、料理が趣味の人が自分の作った料理を模型にするとか、家に思い入れがある人が自宅をジオラマにするとか。こういったものは模型会社では絶対作ってくれないですから。
私は旅行が趣味で、国際交流もしたくて、それを3Dプリンタが具現化してくれました。3Dプリンタが趣味というより、趣味のために使う人が増えて、今まで題材とされなかったものが個人メーカーで作られるようになると楽しいですね」