学研大人の科学マガジン 小美濃芳喜インタビュー
大人の科学のふろく開発者は、メカ、エレキ、ソフト、なんでもござれのスーパーエンジニア!
趣味でEVを作る
こうしてふろく開発をする一方、乗り物好きの小美濃さんが近年はまっているのは、第二次大戦時には戦闘機を製造していたドイツのメッサーシュミット社が戦後製造した、3輪マイクロカーのレストア。車の趣味も、いかにも航空機好きな小美濃さんらしい。既に1台を組み上げ、現在は2台目をどうやって仕上げるか日々プランを練っているところ。庭先で旧車のレストアとは、まるで英国の趣味人のようだ。実際、つい最近まで30年以上に渡り英国車のMGミゼットも所有していた。
しかし、1台目の時にはジェットエンジン(!)を取り付けたり、今プランを立てている2台目はEV(電気自動車)にしようなどと一筋縄ではいかないところも、趣味人でありながら、懐古趣味だけでなく、目新しさにも惹かれてしまう小美濃さんらしい。
「ジュラルミンの板を取り寄せたので、オールアルミでフレームを組んでEVにしようと思っている」
未来を作るエンジニアたちへ
このように、小美濃さんの興味が向かう先には、常にその時代の最先端の技術が視野に入っている。これにはアメリカのRCA社で見た光景と、その後の経験の中で感じた不思議な感覚とが、強烈な印象となって小美濃さんに影響を及ぼしているようだ。
「当時RCAで(ビデオゲームの)ボーリングゲームとか、いろんなものを見ていた。そこで見たことが、日本に帰ってきてから少し経つと始まるっていうのが、まるでタイムマシンだなって思った。だからアメリカはタイムマシンだった。それが正直な感覚だね」
こうして空に憧れた少年は、タイムマシンに乗って未来へと飛び、技術を持ち帰った。そしていつしか、未来を作る子供達へと技術を伝えるエンジニアとなった。最後に、そんな未来を作る若きエンジニアたちへのメッセージを伺ってみた。
「なんでしょうね。(ずっとやっていくためには)好きになっちゃうことでしょうかね。バカみたいに好きになっちゃう。評価されなくても我慢する。ほんとは評価されたいんだけど、評価されないんだよね。褒めてもらえるとうれしいけれど、なかなか世の中そうはいかない。甘くないというか、好きなことやってるんだから耐えるも何もないけどね。(エンジニアという仕事を)やめようと思ったことはないねえ。結局やめられないんだよね」
脚注
※1 Uコン……模型飛行機から伸びる2本のリード(紐)がつながったU字状のハンドルを握って機首の上げ下げを操作する、ラジコン登場以前の模型飛行機。
※2 ウルトラライトプレーン……セスナなどの軽飛行機よりもさらに軽量な超小型機。広義には動力付きのパラシュートやハンググライダーのような機体も含まれる。
※3 NCマシン……コンピュータなどで制御される自動工作機械。CAD(コンピュータを用いた設計/製図システム)との連携により使用されることが多い。
※4 チップマウンタ……電子部品を基板に配置する装置。表面実装機とも。
※5 まなぶくん……当初は8ビットホームパソコンの統一規格であるMSXをベースとし、キーボード部に専用のオーバーレイシートを重ねた家庭学習用パソコンとして開発された。後にCD-ROMへの対応、パソコン用のソフトウェア化などの変遷を経て進化を重ねた。小美濃さんは、低学年/高学年用に分化した専用の独自OS、コンテンツをまなぶくん上のメディアに落とし込むオーサリングシステム、採点や統計のためのバックエンドシステムなどのソフトウェア開発も行った。
※6 イマジン学園……ファックスを使った小中学生向けの添削式通信教育。後にインターネットを利用する方法も登場した。