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ファブ施設の今

詰め込み式から実際に試してみる教育へ——慶應義塾大学の中にファブ施設が誕生した理由

2015年6月に慶應義塾大学日吉キャンパスに新設されたファブ施設「KEIO EDGE LAB "CREATIVE LOUNGE"」(以下、CREATIVE LOUNGE)は、日本のファブ施設の中でも最先端の事例と言っても過言ではないだろう。イノベーションを創出する人材育成プログラムのために用意された同施設は、慶應義塾大学でも教鞭を取るデザイナーの田子學氏がデザインと全体のプロデュースを手がけ、同校の博士課程学生でもあるAgICの杉本雅明氏が中心となり機材を選定した。
ファブ施設のプロデュースは初めてだったという田子氏に、CREATIVE LOUNGE誕生の経緯や大学内にファブ施設を開く意義について伺った。(撮影:加藤甫)

コミュニケーションとファブのちょうどいい距離をデザインする

CREATIVE LOUNGEの内部は、クリーンルームをイメージしたファブスペース(上)と古い工場をリノベーションした雰囲気をイメージしたコミュニケーションスペース(下)で構成。オレンジのビニールカーテンとガラス板で、ゆるやかに間仕切りされている。 CREATIVE LOUNGEの内部は、クリーンルームをイメージしたファブスペース(上)と古い工場をリノベーションした雰囲気をイメージしたコミュニケーションスペース(下)で構成。オレンジのビニールカーテンとガラス板で、ゆるやかに間仕切りされている。

慶應義塾大学日吉キャンパスにある、保育園や病院、フィットネスジムを併設する協生館の一角にCREATIVE LOUNGEがある。ガラス張りのスペースの中にはこだわりの工作機械が並び、外からでも中の様子が伺えるようになっている。
取材当日、コミュニケーションスペースでは学生とスタッフが英語で打合せをし、ファブスペースでは黙々と工作機械に向かって作業する人がいる。オープンな雰囲気の一方で、互いに邪魔にならないながらも、なんとなく何をやってるかが見える距離感だ。
しばらくして「今日は何やってるの?」と教授がファブスペースにやってくる。談笑する利用者とスタッフ、教授。大学の教室というよりは、一般的なファブ施設の光景だ。

「入りやすくて、人を呼び込みやすい仕組みを重視しました。中と外、コミュニケーションスペースとファブスペースを完全に目隠ししてしまうと全てが分離してしまうので、わざと見えるようにして、ゆるやかにコミュニケーションが取れるというのが、あのスペースの狙いですね」

田子氏が自身としては初めてとなるファブ施設をプロデュースするに当たって、参考にしたのは渋谷にあるFabcafeだったという。 

CREATIVE LOUNGEをプロデュースした田子學氏。東芝、amadanaで数々のプロダクトデザインに関わった後、2008年に株式会社エムテドを起業。コンセプトメイキングから製品のリリースまでを一気通貫でデザインするプロジェクトを、さまざまな産業分野で手掛けている。また本業の傍ら、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科特任教授としてEDGEプログラムに関わっている。 CREATIVE LOUNGEをプロデュースした田子學氏。東芝、amadanaで数々のプロダクトデザインに関わった後、2008年に株式会社エムテドを起業。コンセプトメイキングから製品のリリースまでを一気通貫でデザインするプロジェクトを、さまざまな産業分野で手掛けている。また本業の傍ら、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科特任教授としてEDGEプログラムに関わっている。

「僕自身、一番通ったファブスペースがFabcafeで、レーザーカッターの横に、単純にお茶ができる空間が併設されてる。『あ、こういうのができるんだ。じゃ、今度こういうの作ってみようかな』という流れがあそこにはありました。居心地の良い空間があり、その隣には作業が出来る空間があるっていうのが重要だと感じました。ファブスペースの空間設計は初めてでしたが、コミュニケーションを円滑にするためのゾーニングや配色のマナーにもすごく気を使いました。結果的には、狙っていたことがキチンとはまったなという感触があります」

Tシャツがプリントできる機械や映像作品を制作できるようなコンピュータ環境が用意されている横に、サンドブラスターや大型のCNCがあり、息抜きをしたりサークル活動などでの制作作業を行うすぐ傍で、工作機械が稼働する様子が見られるようになっている。 Tシャツがプリントできる機械や映像作品を制作できるようなコンピュータ環境が用意されている横に、サンドブラスターや大型のCNCがあり、息抜きをしたりサークル活動などでの制作作業を行うすぐ傍で、工作機械が稼働する様子が見られるようになっている。

「未経験者であっても、いかに取っ掛かりやすいか」と「いかにマニアックな要求にも耐えうるか」、この両極端の要求を満たせるよう、機械選定も慎重に進めた。

「例えばはんだごてひとつとっても、選定してくれた杉本君曰く『本気で基板を作るなら、これくらいないと駄目』というレベルのツールを豊富に用意したり、将来的に金属の3Dプリントが普及する事を見越してサンドブラスターを導入したり、このスペースの中だけでも仕上げまで一気通貫できる事を意識しています。とはいえ、ハードルが高すぎると入りにくくなるので、学園祭向けにTシャツをプリントできるような機材で利用者の間口を広げ、スキルのある人とない人が出会って新しい発想が生まれる事を期待しています」 

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