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ファブ施設の今

詰め込み式から実際に試してみる教育へ——慶應義塾大学の中にファブ施設が誕生した理由

趣味の延長線ではなく、起業するためのファブ施設

EDGEプログラムのために作られたCREATIVE LOUNGEだが、最終的には学外にも一般開放することを目指している。現時点では、関係者からの紹介を通じて利用目的が運営方針に合致していると認められれば利用可能となる。今後については、学生スタッフとともに運営しながら、方針や利用方法などを検討している段階だ。

「全く関係ない人がCREATIVE LOUNGEで何かを生み出し羽ばたいたとしたら、大学にとってもメリットがありますよね。つまらない理由で門前払いしていては何も生まないと思うので、全部オープンにしていきたいと思っています」

国際的な家具見本市「ミラノサローネ」にも出展し、授業の成果発表として製品のプロトタイプを展示。多くの来場者からの反響が、学生たちにとっても大きな自信になった。

「普通のファブ施設だと、自分が作ったものをミラノサローネに持っていくことはなかなかできないと思いますが、ここで作ることでミラノを狙える、世界に挑戦できるという仕組みができたというのは、一番強烈なコンテンツだと思います。もちろんEDGEだけで全てできるわけではないので、教授やOBのネットワークを使ったり、外部のメーカーとも連携しています。さらにファンドもいくつか参加し始めています。

こうした環境があると、意欲のある人たちが集まりやすくなり、モチベーションにさらに火がついて、世界で戦える人材が育っていくという仕組みが自然に発生します。試作をやる際にEDGEに来れば可能性が広がるという雰囲気になるといいですね。さらには毎年ミラノサローネへ挑戦を続けていきたいという話も出ているので、良い方向に進んでいるのではないでしょうか」 

母校である東京造形大学でも教鞭を取る田子氏は、同校の学生にもCREATIVE LOUNGEを紹介している。 母校である東京造形大学でも教鞭を取る田子氏は、同校の学生にもCREATIVE LOUNGEを紹介している。

CREATIVE LOUNGEの最終的な目的はプライベートなDIYスペースではなく、あくまでも起業するためのプロトタイピングスペースだが、ものづくりに対する苦手意識を払拭し、プロトタイピングのハードルを下げていく事が入り口において、最も重要だと田子氏は考える。

「もともとSDMは文理統合を目指しています。文系だからものづくりができないとか、理系だからプレゼンが下手とか、そういう事は言ってられないご時世だと思うんですね。今まで苦手意識を持っていた人にとって、入りやすくて自由に使えるファブ施設があることで、『なんだ、こんなに簡単にできるんだ』という発見をしてもらいたいと思っています。しかも学生に限らず、多くの人に利用してもらいたい。苦手意識から解放されるだけで、人々の発想は一気に豊かになります。自分の手を動かせば何でも生み出せるってことを知ってもらうことで、新たな産業を創出する間口を広げていきたい。こう考えれば産業が生まれるマグネットスペースとして、ものづくりができるファブスペースが必要だと思うし、増えていってるのも当たり前と感じています」

大学内のファブ施設は他にも、慶應義塾大学SFCキャンパスの図書館(メディアセンター)内や神奈川大学が運営しているFabLab平塚βなどがあり、公立はこだて未来大学も準備中である。またEDGEプログラムの中では九州大学が2016年1月から、MITと連携したファブラボの教育プログラム「ファブアカデミー」を導入する
CREATIVE LOUNGEはそうした大学内ファブ施設が増えつつある時代の中で、少し先の将来にあるべき「ものづくり教育」の形を体現したスペースなのかもしれない。 

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