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ファブ施設の今

詰め込み式から実際に試してみる教育へ——慶應義塾大学の中にファブ施設が誕生した理由

プロトタイプとディスカッションを重ねながら学べる施設を目指す

EDGEプログラム(正式名称:グローバルアントレプレナー育成促進事業)は、イノベーションやアントレプレナーシップについて学び、ベンチャーの創業や既存企業での新事業創出を牽引する人材の育成を目指すプロジェクトで、現在は文部科学省の主導の元、日本各地から13大学が参画し各校が独自のプログラムを運用している。
慶應義塾大学では、成長著しいアジア各国の大学からEDGEプログラムに参加する学生を受け入れ、校内外の日本人学生と留学生をミックスしたカリキュラムを組んでいる。

「EDGEプログラムを担当する慶應義塾大学のSDM(大学院システムデザイン・マネジメント研究科)は、世の中の課題解決をどうデザインしていくかということをずっとやってきたんですね。世界的に見てもデザイン教育は盛んですが、ややもすると手法に陥りがちなところがあります。しかし手法に頼るだけでは、ビジネスの現場で起きてることを全て解決することはできません。体系化された手法を利用すること自体はいいけれど、それ実体験として落とし込めていないことに偏りを感じていました」

田子氏が慶應義塾大学の特任教授に就任した頃、アメリカではデジタル・ファブリケーションが話題になり始め、大学でもファブ施設を学内に作り、積極的にプロトタイピングする動きが伝わってきていた。

「これまで頭の中で考えているだけだったことも、デジタル・ファブリケーションでプロトタイピングしていくことで、サービス面や、その先のセールス・プロモーションまで圧倒的にスピードが上がり、正確にイメージしやすくなるんです。モノが与える影響やサービスを可視化する事が容易になったので、そういった機械を導入しましょうという話に自然となりました」

折しも、文部科学省のEDGEプログラムに慶應義塾大学も参画する事が決まり、世界水準の教育プログラムを検討していくに当たってファブ施設の導入は必要不可欠という結論に至った。 

「一方的に教師が知識を教えるだけではなく、ディスカッションしながら教わったことについて自ら考える教育をしていくーーそこに真の意味でのデザイン教育があるわけで、プロトタイプとディスカッションを重ねながら学べる施設が海外にはあって日本の大学に無いのはおかしいよねという話になりました。教育自体が詰め込み式から変わり始めていく中で、いろんな人が集まって共に何が正解かを模索していく場をどう設計するか、ファブが持つ何でもできそうなポテンシャルと、誰でも入れるような雰囲気のある空間は絶対に用意すべきだし、ここで学んだ人たちを次の時代を作る主役にしたいという想いがありました」

こうして、日吉キャンパス内の協生館一角の改装が始まり、2015年6月のオープンにこぎつけた。 

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