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池内啓人インタビュー

空想を具現化するメディアアーティスト・池内啓人——デスクトップを秘密基地に見立て、プラモデルで「いつか見た未来」を再現

ドラム缶や壊れた兵器などが雑然と転がるビルの一角。戦闘後なのか、鉄骨や配管がむきだしだ。忙しく立ち回るカーキ色の軍服を着た兵士と護衛のロボット。秘密基地のワンシーンだが、俯瞰するとデスクトップパソコンとモニターという日常のデスクが現れる。ここは、第17回文化庁メディア芸術祭優秀賞を「プラモデルによる空想の具現化」で受賞した、新進気鋭のメディアアーティスト池内啓人が空想する世界だ。この驚異の作品はどうやって生まれたのか?(撮影:加藤甫)

マウスが戦車に見えてきた

「これで覗いてみてください」

望遠鏡を渡された。2mほど離れて作品を望遠鏡で眺めてみる。遠近感がぼやけて奥行きが出る。シーンの一つ一つに入り込むことができ、まるで映画を見ているようだ。拡大されても世界観が変わらないのは、ディティールまでしっかり表現されている証拠でもある。

アトリエには、過去の池内作品が所狭しと並べられている。中でもデスクトップパソコンをジオラマ化した一連の作品が目を引く。周辺を含めたパソコン周りのハードウェアを、模型のパーツを用いて改造した。きっかけは多摩美術大学時代のサークル活動にあった。

「学祭用の作品を作る時です。所属していたのはデジタル研究部というオタクサークルで、ふつうはアニメやCGを作ります。でも自分は、どうしても模型がやりたかった。申し入れたら『デジタルに歩み寄ってくれ』と言われて。そこでマウスを眺めていたら戦車に見えてきました。模型のパーツで改造してみると、かっこいい。その後、さらに発想が広がって、デスクトップパソコンの中身が秘密基地に見えてきた。大切な情報を保護する施設と考えればまさにぴったりです。基盤や冷却ファンなど、見えないところを表に出す面白さもあります。『模型は趣味だけでなく芸術作品になりうるんじゃないか』と思って、卒業制作のテーマに選びました。1年かけて作ったのがこのシリーズの最初です」 

「デスク上のモニターやパソコンを眺めるうちに、秘密基地に思えてきました」と語る池内さん。 「デスク上のモニターやパソコンを眺めるうちに、秘密基地に思えてきました」と語る池内さん。
戦車になったマウス。人差し指の下にクリックのためのボタンがあり、実際に押せる。 戦車になったマウス。人差し指の下にクリックのためのボタンがあり、実際に押せる。

制約がアイデアを生む

池内さんの秘密基地は単なるジオラマにとどまらない。電源をオンすれば、パソコンが作動し、モニターが立ち上がる。戦車のマウスはクリックできるし、砲台型のUSBメモリは、そのままスロットに挿して使える。

「あくまで私が使っていたパソコンがこうなったという空想の世界です。だから、デスクトップ画面は私が使っていた当時のものです。機器が機能することは作品の重要なコンセプトです。そのために、さまざまな制約が生まれます。パソコン内部を壊さないで改造を施すとか、ボタンなどの機能するパーツは位置を変えないとか。しかし、縛りを入れることで、違うものを引き出す面白さにも気がつきました」 

パソコンの中身。兵士の後に電子基板、頭上に冷却用のファンが見える。 パソコンの中身。兵士の後に電子基板、頭上に冷却用のファンが見える。
兵士が見ているのは8mmフイルム。アナログのフィルムから得た情報を解読し、秘密基地でデジタル化するイメージだ。 兵士が見ているのは8mmフイルム。アナログのフィルムから得た情報を解読し、秘密基地でデジタル化するイメージだ。

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