池内啓人インタビュー
空想を具現化するメディアアーティスト・池内啓人——デスクトップを秘密基地に見立て、プラモデルで「いつか見た未来」を再現
日本の伝統的芸術技法「見立て」
歌舞伎や能の世界にもある、芸術の一技法に「見立て」がある。対象を他のモノになぞらえたり、異なるものを共通点があるものとして捉える。池内さんの作品を見ていると、「見立て」文化の継承を感じる。
「昔の人は、身の回りの農具を妖怪に見立てて『百鬼夜行』の絵を描きました。同じ感覚で、ロボット掃除機にターボをつけてホバークラフトに見立てたり、タワーをつけてコーヒーメーカーを発電所に見立てたり。何かを別の何かに変えることに、はまっています。もちろん、ホバークラフトで掃除もできますし、発電所でコーヒーも沸かせます」
オタクカルチャーが発想の原点
確かな伝統技法の継承とともに、池内作品には、新たな日本の文化となったオタクカルチャーが根底にある。
「小中学生の頃は、アニメやゲーム、SFの世界にはまっていましたね。『スターウォーズ』や『ガンダム』『攻殻機動隊』『パトレイバー』『ゾイド』などに影響されました。発想の原点になっています。でも、模型に手をつけたのは大学に入ってからです。もちろんジオラマも作ったことがなくて。卒業制作のジオラマが最初の作品ですね。最新作はサーバの秘密基地です。Raspberry Piを使っています。サーバの役割は、一つのサーバからいろいろなサーバにデータを送ることだと思うので、そういう機能をもたせたいと思いました。この秘密基地でロボットを作って、他のジオラマに送り込むイメージです」
今後、池内作品はどういう方向へと向かうのだろうか?
「コラボはまたやってみたいですね。アート作品でなくてもかまいません。例えば、車椅子。『ほんとは外に出たいのだけど、車椅子がかっこよくないから出たくない』という話を聞いたことがあります。こういう人でも、デザイン的にかっこいい車椅子があれば、外出が楽しめるんじゃないかと。一人ではできないので、誰かといっしょにやりたいですね」
ジオラマやウェラブルデバイスも、継続して続けていくという。
「テクノロジーが進化して、これからも新しいハードウェアがきっと出てくるでしょう。それを別なものに見立てて、アート作品を生み出せたら、と思います」
この先、どんな作品が誕生するのか? 池内さんから目が離せない。