Makers' Baseインタビュー
年間1万人が集まるファブ施設Makers' Baseが作る、シェアする時代のものづくり
東京・目黒に2013年にオープンした会員制工房「Makers' Base Tokyo」は、さまざまな工作機械が利用できる工房の提供だけでなく、錫(すず)で作る酒器やシルバーリング、カフェにあるようなスツールの製作などが体験できるワークショップも開催している。
この1年で大きな成長を遂げたMakers' Base Tokyoの原点とも言える目黒の店舗が、2016年4月に東急東横線都立大学駅前に移転した。移転の理由は店舗の老朽化だが、この街でまた新しいことを始めようとしている。なぜMakers' Baseは2年半という短い期間で、さまざまな成果を上げているのか。今回の取材はちょうど引っ越しの最中で、まさにいろんな設備が新店舗に運び込まれている中、COOの松田純平さんに今後の展望も含め伺った。(取材:越智岳人、文・構成、元田光一、撮影:加藤甫、完成後の店舗内写真提供:Makers' Base)
なんとかなると思っていたけど、人が来なくて絶望した1年目
目黒で開業し今回移転するまでの2年半を振り返った松田さんは、最初は絶望の連続だったと語る。
「とにかく人が来ないという期間が半年くらいありました。当初はスポーツジムと同じように会費制にして、その売り上げで運営していくつもりでした。月400~500人くらい集まればなんとかなると思っていたのですが、全然会員が集まらなくてよく続いたなと思っています」
個人では利用できない機材を集め、自由にものづくりができる環境があるのに、会員が増えない。当初のもくろみが外れ、頭を抱えた松田さんはイベントでの集客を考えた。
2013年12月にOpen Baseというイベントを開催した。3Dプリンタを使ったキャンドル制作などクリスマスをテーマにしたワークショップや、工房で制作した作品販売を行うイベントで、Makers’ Baseとしては初めての大がかりな企画だった。
すると、ファッションリング(指輪)のワークショップの申し込みがすぐに埋まり、イベントもこれまでにない盛況のうちに終わった。この時に、これまでと同じやり方であってもファッションなど誰もが関心のあるテーマにすれば、十分に人を集めることができると気付く。
「とはいえ、その人たちは別に自分でものを作らなくてもよくて、難しいところは先生お願いしますと頼んでしまう。作るのが好きな人ならそうはなりません。すなわち、そういったワークショップに参加する人たちの多くは、作ることが目的ではなく作る手段を得るためにここに来る。そして、ものを作ることにお金を払うのではなく、作ったものにお金を払うのです」