Makers' Baseインタビュー
年間1万人が集まるファブ施設Makers' Baseが作る、シェアする時代のものづくり
ビジョンが共有できるからこそ、いろんな人と深くつながっていける
松田さんのビジョンは創業時から変わっていない。2020年には国内に7店舗、海外に8店舗出店し、年商20億円を目指す。2020年を目標にしているのは、やはり東京オリンピックの開催を見込んでのことだ。海外からの観光客に対して、日本はものづくりが充実しているということをアピールしたい。それを面白いと思ってくれた人には、実はMakers' Baseはあなたの国にもあるのですよと海外の店舗を紹介する。すると、その国でもMakers' Baseの名前が広がっていく。
「自分たちだけで頑張っても市場を作るのは難しい。だからどんどんこの市場に入ってきてほしいと思っています。そうすれば、これまでいろいろと協力をいただいているメーカーさんも潤うことになります」
松田さんの周りには、たくさんの協力者がいる。さまざまな分野の人たちとつながりができるのは、ビジョンが共有できるからだと語る。
「Makers' Baseは、その場限りのただ楽しいだけのスペースにしようとは決して思っていません。きちんとビジネスとして成り立つ、新しいコミュニティを作りたいと思っています。イベントをやるにしても、単にメーカーさんにスポンサーになってもらうのではなく、お互いが協力して稼げることを提案します。一緒に発展できると思える人と、一緒に発展できる道を作ることを考えるのです」
都立大学で始める新しい試みとして、松田さんは3つのことを考えている。1つは、デザイナーやクリエイターたちが新しいビジネスのやり方を学ぶ「Drink & Study」の開催。毎週金曜の夜19時から、お酒を飲みながらというラフなスタイルで行う。
2つ目は、「MBMB(Made By Makers' Base)」という新サービスの立上げ。ワークショップの延長と考えており、主にデジタルプリント機器を使って、来店することなく自分オリジナルのものが手に入る、ギフトを中心としたオーダーサービスだ。Webでのオーダーが基本だが、実店舗でものを見ることもできる。
3つ目として、まだ詳細は検討中ということだが、クリエイター向けのサポートサービスを準備している。作ったものをどうやって売っていくのかをサポートするもので、商品撮影からECサイトの使い方、パッケージデザインまで支援するプロモーションサポートである。
さらなるビジョンとして、松田さんはいずれここをものづくりの街にしたいと語った。
「今この街には駅名の由来となった都立大学は存在せず、大学という名前だけが残る不思議な街になってしまいました。そこで、この辺りにMakers' Baseを中心としたものづくりの生態系を作り、なにか作ろうと思ったら都立大学に行こうと言われるような街を作ることができないかなと思っています。工房やシェアオフィス、アーティスト・イン・レジデンスなどがあり、工作機器メーカーや素材屋も集まって技術者もいる。ものづくりを学ぶこともでき、それらが統合されたコミュニティが都立大学と呼ばれるようになりたいですね。都立大学に再び都立大学を作るのです」
地方への出店を進めながら、都内の店舗をリスタートしたMakers’ Base。台北市との提携を通じて、海外進出も現実的なものになりつつある。
個人の作り手や機械メーカー、流通業界に至るまで、ものづくりを通じて関わる人が幸せになる世界を築くために、松田さんとMakers’ Baseのクルーは今日も各地の工房で汗を流している。