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exiiiインタビュー

筋電義手からVRに進出したexiii——これまでに得たものと、これからのこと

150万から1000万円ほどもする筋電義手が、たった3万円程度の原価で製造できる「handiii」と、そのオープンソース版「HACKberry」で知られるスタートアップexiii。彼らが次に開発を表明したのはVR空間で触った感覚が得られるデバイス「EXOS」だった。創業メンバーの1人が退社し、新しいプロジェクトにかじを切ったexiiiの2人に起業後から現在に至るまでの経緯を聞く。(撮影:加藤甫)

開発を加速させるためのオープンソース化で見えたもの

あらためてexiiiについて振り返りたい。低コストでデザインに優れた筋電義手「handiii」の製品化を目指し、近藤玄大氏、山浦博志氏、小西哲哉氏の3人が、それまで勤めていたメーカー企業を退職し2014年10月にexiiiを設立。

3Dプリンタを活用して低コストに製造できるhandiiiは1.7%ともいわれる国内普及率を変えうる存在として、早くから注目を集めた。

起業した頃のexiii。左から小西哲哉氏、近藤玄大氏、山浦博志氏。近藤氏は2016年9月に代表を退き、NPO法人Mission ARM Japanに移った。 起業した頃のexiii。左から小西哲哉氏、近藤玄大氏、山浦博志氏。近藤氏は2016年9月に代表を退き、NPO法人Mission ARM Japanに移った。

GUGENやジェームズ・ダイソン・アワード、iFデザインアワードなど国内外のコンペで受賞。起業から間もなくオープンしたDMM.make AKIBAに入居後は、今までになかったインキュベーション施設に入居するスタートアップとして紹介される機会も少なくなかった。

2015年に発表した「HACKberry」は、handiiiをベースにした筋電義手のオープンソースプロジェクトだ。3Dパーツのデザインファイルと、電子回路基板のデータ、制御用に使われているArduino用スケッチを公開し、誰でも開発できる形を採用した。

マス向けの製品ではないので大規模な投資は難しい。かといって、3人で何年も開発に時間をかけるわけにはいかない。そこで自分たち以外の開発者の力も借りて、必要な人たちに少しでも早く届けられる道を選んだ。

あらかじめ必要な特許は取得し、商用利用の場合は利益をexiiiにも還元することを利用規約に盛り込むことで、ビジネスとしての道も残した。利用規約やライセンスの作成はCreative Commons Japanの理事も務める水野祐弁護士やIAMAS(情報科学芸術大学院大学)の小林茂教授らがサポートした。

オープンソース化したことは海外の技術者にも広がり、Webサイト上のフォーラムには実際に開発したHACKberryの写真やテクニカルな質問などの投稿が次第に集まるようになった。 

米コロラドのMakerスペースで開発されたHACKberry (HACKberryのフォーラムより) 米コロラドのMakerスペースで開発されたHACKberry (HACKberryのフォーラムより)
5歳の子ども用にオリジナルの70%の大きさで再設計されたHACKberry。ポーランドのメンバーが開発し、動画を投稿した
フランス人エンジニアNicolas Huchetさんは自身の義手をHACKberryで開発した

「オープンソース化した当初、僕たち以外の人が作って、それをユーザーに届けてくれるようなことが起き始めたら、それはひとつのゴールだねという話をしていました」(exiii 山浦氏)

近藤氏の後を継いで代表となった山浦氏。 近藤氏の後を継いで代表となった山浦氏。

これまではプロダクトデザインの受託案件や、企業や行政からの助成金を資源に開発を進めてきたが、筋電義手の開発だけでは事業展開は難しい。そんな中で筋電義手の開発時から山浦氏が注目していたのがVR(バーチャルリアリティ)だった。

「handiiiを作ったのは自分で考えたものが動くところを見たいというのが動機で、それを機械として仕上げていたわけですが、VRは、その動機に合っているなと気付きました」

「Oculus Rift」「HTC VIVE」に代表されるヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、それまでコンシューマ向けでは、ごく限られた用途のものだと思われたVRの世界を本格的なものに引き上げた。

これまでの筋電義手開発で得られたノウハウや技術を活用すれば、自分たちの強みを生かした製品がVRの世界で受け入れられるかもしれない。そう感じた山浦氏は自費でHMDとコンピューター一式を買い、2人に自分の思いの丈をぶつけた。

「そんなにお金に余裕もなかったけど、これは買うしかないと思って自腹で全部買いました。最初は反応が薄かったんですけど、試作品を作ったら具体的に話が進むようになり、そこで初めて今後について話し合いました」

自分たちの製品が未だ事業化していない状況で2つの製品を開発していくことは、リソースの面でも、新たな投資を受ける面からも難しい。これまで手掛けてきた筋電義手の開発と普及か、それとも新たな製品に着手するか。議論を重ねた結果、それまで代表を務めてきた近藤氏は共同で開発を進めてきたNPO法人に移り、exiiiからライセンスを受ける形で筋電義手の開発と普及に注力。山浦氏と小西氏はexiiiに残り、VRコントローラの開発にシフトする結論に至った。

筋電義手の開発は上肢障害者のためのコミュニティを運営するNPO法人Mission ARM Japanに主体を移したが、引き続きexiiiとしても開発を支援していく。 筋電義手の開発は上肢障害者のためのコミュニティを運営するNPO法人Mission ARM Japanに主体を移したが、引き続きexiiiとしても開発を支援していく。

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