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オンリーワンを作りたい——こだわりを追及する同人的ハードウェアグループ「TOKYO FLIP-FLOP」

「レシートデジカメ」。スマートフォンで撮った写真を、その場でレシート用紙に印刷する。 「レシートデジカメ」。スマートフォンで撮った写真を、その場でレシート用紙に印刷する。

そしてこちらは現在開発中の「レシートデジカメ」だ。シャッタースイッチはBluetoothでスマホに接続されている。

斎藤:これはまだプロトタイプで、言ってみればプリンターカメラです。インスタントカメラのような感じで、粗い白黒の2値画像で印刷されます。こういうレシートのような枯れた技術ってけっこう好きなんですよ。最先端を追い求めるのではなくて、いまある技術を組み合わせて新たな価値観を作るみたいな。

松田:イベントでも、これ欲しいという声があって。昔のポラロイドカメラみたいに、撮ってその場で写真になるのって最近見かけないじゃないですか。一周回って逆に新鮮に感じられ、ウケるんですよね。

いろいろな「定礎」グッズ。人気商品の宿命で、まねされることもあるという。 いろいろな「定礎」グッズ。人気商品の宿命で、まねされることもあるという。

他にもコミケなどで販売しているというグッズを持ってきていただいた。ビルディングなど建築物に刻まれている「定礎」という文字をあしらった「定礎シール」や石屋さんに加工を依頼している大理石製「リアル定礎ペーパーウエイト」、エアコンの室外機をデザインし、信楽焼の職人さんに一つ一つ手作りしてもらっているという「エアコン室外機フィギュア」、そして実寸大のフロッピーディスクをアクリル板で作った「アクリルフロッピーフィギュア」だ。

——いろいろなアイデアが出てくると思いますが、どのように選んでいますか?

斎藤:この「アクリルフロッピーフィギュア」は、何かフロッピーって良いよねってことで。

——その良いね、の基準が知りたいです(笑)

斎藤:メンバー間でアイデアを共有していますが、しきい値は低くしていて、面白いと思うものならまず作ってみようと。この定礎シールも2000枚以上売り上げていて、ちょっとしたブームになりました。

松田:定礎シールのように、コミケがきっかけとなってSNSでも話題になり、ブームの火付け役になるようなケースもあります。どの商品も爆発的に売れるとは思っていないんですが、必ず欲しいという人がいるものを作っています。

実際に手に持ってみるとなんか良いなという所有感があって、響く人には響くものを作りたいという松田さんと斎藤さん。商品として買ってもらえるレベルのものを作るのは結構ハードルが高いと思われるが、秘訣(ひけつ)を聞いてみた。

陶器製の「エアコン室外機フィギュア」。自分たちで作れないアイデアでも、他人の力を借りて具現化する。 陶器製の「エアコン室外機フィギュア」。自分たちで作れないアイデアでも、他人の力を借りて具現化する。

松田:この「エアコン室外機フィギュア」は原型を3Dプリンターで作って、それを信楽焼の職人さんに渡して手作りしてもらっています。

——信楽焼の職人さんですか? どういうつながりなんですか?

斎藤:奇跡的なんですが、twitterで「この室外機のフィギュアを陶器で作れる人いませんか」と尋ねたところ、信楽焼の職人さんが手を挙げてくれて(笑)。この線の細さや角ばった形はその方の持ち味で、他の人では作れないんです。いろいろなすごい方に手伝っていただいています。

松田:「定礎ペーパーウエイト」も、ネットで石屋さんを探して協力してもらっています。石像とか墓石とかを造る職人さんがその技術を使って作っている。自分たちでできないことでも、調べれば他にある技術でできるんです。

——自分たちでできないところは外の力を借りてということですね。

松田:SNSなどを使えば、いままで知り合えなかった独自の技術を持つ人とも知り合える、何のコネもない人に作ってもらえる。そういったコラボレーションを積極的に進めようと思っています。

大理石製の「定礎ペーパーウエイト」と「定礎スタンプ」。本職の石屋さんに依頼した製品だ。一つ一つ違う字体や本物の素材が生むリアルさがある。 大理石製の「定礎ペーパーウエイト」と「定礎スタンプ」。本職の石屋さんに依頼した製品だ。一つ一つ違う字体や本物の素材が生むリアルさがある。

これまでもいろいろなハードウェアベンチャーの話を聞いてきたが、もっとスケールの大きいところを目指したいとか、売らないんだけどアート制作を目指す、という方向性はよく耳にする。最後にTOKYO FLIP-FLOPが目指す、今後の方向性を尋ねた。

松田:いつかは事業化したい、というのが一番強いモチベーションですね。レジプラもコミケに出店するサークルが3万あるので市場シェア100%取れば3万台売れると(笑)。実際に買っていただいて、コミケでも使ってくれている人が結構います。

——社会人やりながらだと時間の制約もあると思いますが? 事業化を目指すとなると、リスクもあるでしょうし。

松田:あくまでできる範囲でやっています。我々には大量生産はとてもできない。小ロットで数十個単位くらいで市場に出し、状況を見極めながら、というやり方です。イベントに出てグッズが売れて、その売り上げを研究開発につぎ込んで、お金がなくなるとまたグッズ作ってと、これが私たちの好循環になっています。ハードを作るだけのサークルや、個人だととてもここまでできない。

斎藤:こうやっていろいろな商品を世に出していくうちに知名度が上がってきて、今後活動の幅を広げられればと思っています。自分たちがこういうことを考えてこういうことをやっているというのもアピールしたいと思っています。製品だけをポンと出すのではなく、どういう思いがあって、どういう苦労があって、というところも知ってもらいたいです。

 

超ニッチなものでも必ず欲しいという人がいる。そんなオンリーワン商品を作りたいと語るお二人。それがTOKYO FLIP-FLOPのこだわりだ。

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