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人工衛星×IoTで日本の養殖業を変革する——海洋系ベンチャー「ウミトロン」のチャレンジ

——宇宙から海洋を扱われるようになったわけですが、海ならではの難しさというものはありましたか?

藤原:陸地はセンサー類も置きやすいのですが、海に出るとセンサーひとつ置くのも大変なんです。洋上でスタンドアロンで動くデバイスなので、特に電力マネジメントは大変でした。電源系の開発は丁寧にやるしかないですね。ただ、太陽光だけを使うことは最初から決めていました。人工衛星をやっていて、そういう設計は好きですから(笑)

海という環境に即した対策

藤原:また、海の中には生物が驚くほどたくさんいるので、付着物の対策が大変です。海藻やフジツボ、ヨコエビとかがすぐに付着します。海藻対策をすると別の生物が付着したり。洋上は腐食も早いため金属ではなく樹脂を使っていますから、塗料メーカーに相談して樹脂に塗布できるコーティングをして対策しています。あと、センサーデバイスの設計は僕がやっていますが、これまでのようにボルトやカシメを使う設計をすると現場では使いづらいんです。海の上は揺れるので、設置の際に工具を海に落としたりとか。ところが、生産者の方は何でもロープワークで解決しちゃう(笑)でもそれは理にかなっていて、工具もいらないし腐食もしない。手さえあればがっちり固定できる。そういう発見があったのも面白かったです。

——このシステムを導入するとどれくらいの効果があるのでしょうか?

藤原:今は4社に試験的に導入してもらっています。生産者ごとに1~2台の規模ですが本格的に導入するようになると、中規模生産者で20台、大規模で100台ほどになります。養殖の餌代は、いけす1カ所で月80~100万円ほどかかりますから、弊社が目標としている餌の1割削減ができればメリットは大きいです。

生産者の困りごとには、餌代の高騰のほかに、赤潮のリスクがあります。毎月100万円の餌代を使って2年間育ててきた魚が、赤潮でゼロになってしまう。この事業リスクは脅威なので、気象データや環境データとともに赤潮の発生も捉えて、速やかに対策を取る必要があります。

国内で2万台の導入が目標

——ウミトロンとしての事業目標を教えてください。

藤原:日本の養殖が年間4000億円規模で、その6~7割を占める餌代の1割削減が目標です。養殖業者数は1500社ほどなので、国内で2万台規模のオペレーションを目指します。日本の養殖業は世界市場の2%程度なので、将来的には海外で実証試験をやりたいですね。

——今後の取り組みなどについてお聞かせください。

藤原:いろいろヒアリングをすると、海洋環境の方は経験則的な理解をされていることが多くて、データ解析的なアプローチは全く手が付けられていないんです。海洋の環境って非常に変わりやすくて、午前中べたなぎ(無風で波が穏やかな状態)だったのに午後からすごく時化(しけ)たりとか、急潮といって急に水温が下がったりとか、データの変化が大きいのでモニタリングと親和性が高いんです。洋上では取得できるデータ量が陸地よりも少なくなるので、点ではなく面でのデータを見ようと思ったら、宇宙から見るしかないんです。環境データの取り込みにはローカルセンサーも使うんですが、マクロでみた衛星データも今後はもっと積極的に活用しようと思っています。

先進技術の「橋渡し役」を目指すウミトロン

藤原:他にも種苗生産では、親と子の特性など系統管理をする必要があるんですが、魚の産卵行動を見ていないと記録が残らず、見分けがつかなくなってしまいます。現状ではDNA解析でどの親なのかをさかのぼって調べたりしていますが、それを画像解析で判定できるようにしてみたいですね。IT系のテクノロジーと生理生態学との融合というところのお手伝いもしてみたいと思います。

僕がJAXAにいた時に、研究された技術やデータが世の中に出て行くことが少ないと感じたこと、それがウミトロンの事業化を考えるきっかけになりました。日本の水産研究はすごく進んでいるので、ウミトロンを通じて研究と実際の生産現場の間の橋渡しができれば、そのデータをどんどん現場で応用していくのを手伝えたら、と思っています。

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