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人工衛星×IoTで日本の養殖業を変革する——海洋系ベンチャー「ウミトロン」のチャレンジ

情熱を懸けられる仕事がしたいと語るウミトロンCEO 藤原 謙氏 情熱を懸けられる仕事がしたいと語るウミトロンCEO 藤原 謙氏

情熱を傾けられる仕事を探し求める

——子どもの頃からの憧れの象徴ともいえるJAXAを休職、2011年に留学されました。

藤原:僕のキャリアの中ではとても大きな転換で、すごく悩みました。JAXAでは、超一流の研究者たちが20年30年とかかる衛星プロジェクトを、全キャリアを懸けてやっているんです。30年後に打ち上げるために今日やるべきことをちゃんと決めていて、必要になればそのために今日徹夜する。大学の先生や教授レベルの人たちが激論を交わしながらプロジェクトを進めているのをみて、自分も同じくらいの情熱でやれる仕事ってなんだろうと。やるなら中途半端ではなく究めなければいけない、もう一度勉強しようと思ったんです。

——2年間のアメリカ留学では、どのようなことをされたのでしょうか?

藤原:ベンチャーの支援を3社やりました。学生が起業した半導体系の新しい会社とモビリティ系の会社を手伝いました。もうひとつはインターンという形で宇宙旅行のベンチャー会社の事業計画の手伝いをしていました。この宇宙旅行の会社は面白かったですね。創業者の1人が資産家で全面的に資金を提供し、もう1人がアントレプレナー(起業家)として機体のコンセプト作りから始めていたところに参加し、ビジネスサイドから事業計画を作っていました。

 

藤原さんはアメリカ留学から戻ったのち、2013年に三井物産に入社する。同社では衛星データを使った精密農業サービスに携わり、このころからウミトロンのイメージが具体化してくる。

MBAを取得し、三井物産に

——三井物産ではどのようなお仕事をされたのですか?

藤原:ちょうど新規事業を担当する部署ができて、そこに配属されました。最初はテクノロジー系の会社を担当したり、大規模オペレーションの中で新しい技術を活用するようなサポートをやっていました。そのうち、僕に宇宙開発というバックグラウンドがあったためか、社内の「宇宙ファン」みたいな人たちから声をかけられ、小型衛星のベンチャーに関わることになり、次に人工衛星のデータを農業に活用するところを担当しました。この衛星データを使った精密農業に携わったのが、入社後2年くらいの時です。

JAXAにいたころから、「人工衛星の技術を世の中に浸透させる橋渡し役」をやりたいと感じていました。衛星データの活用と言われてもピンとくる人は、僕が思っていた以上に少ないんです。「衛星にはどんなデータがあるのか、どういう活用の可能性があるのか」をいろいろな人と意見交換しましたが、既存の事業でオペレーションしている人ではなかなか活用方法のイメージが湧かない。宇宙開発が身近にないため、宇宙技術が自分のビジネスに活用できることに気づく人が少ないのだと思います。これがビジネスになるということを、まず自分でやってみせたいと思いました。

「水産養殖」という新たなフィールド

——宇宙と海というと正反対のようにも思えます。なぜ、水産業に着目されたのでしょうか?

藤原:三井物産では、いろいろなビジネスを担当する立場にいたので、そのころ水産養殖が気になっていました。実は、2005年頃に微細藻類や微生物からジェット燃料を作るベンチャーがたくさん出てきていたんですが、調べてみるとその事業モデルがジェット燃料から魚の餌に変わっていたんですよ。なぜだろうと思って調べてみると、養殖に使う魚の餌の価格が10年で3倍くらいに高騰したため、それでビジネスに変化が起きていたんです。そこで水産養殖って面白いなと思いました。まず役に立つサービスから作っていかなければと思って、水産養殖をターゲットにウミトロンを立ち上げました。

水産業で何ができるのかと思い、まず大学の先生や生産者のところに行って話を聞きました。生産者は海洋条件を見ていて、今日の海の色はどうだとか温度がどうかとか情報を使いながら生育をしているんです。そこで、もっとデータ量を増やして、魚の生育を体系的に見ることでもっと効率化できると確信しました。

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