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年末特集2017

億単位で資金調達しても成功するとは限らない——クラウドファンディングが目指すべき道筋とは【年末特集】

——ここからは一ユーザーとしての松崎さんにお話を伺います。まだ届いていないものも含めて、松崎さんが支援された中で、2017年最も印象的なプロダクトは何でしたか?

松:明晰夢が見られるLucidCatcherでしょうか。CESのエウレカパーク(CES内で、スタートアップが出展するエリア)にいたウクライナ勢の中で、一社だけ自分自身が消化不良を起こすというか不可解なブースがあって、それがこれを開発している会社だったんですね。睡眠時の脳波をセンシングして、夢を見ていると思われるタイミングで耳の後ろにつけた電極から微弱電流を流すことで、自分が夢の中にいるということが分かるので、夢を自由にコントロールにできるようになるというデバイスなんですけど。

——『インセプション』※の世界ですね

松:マニュアルには自分が夢の中にいると分かった時にやってみる事として、ドアを開けて、その先に何があるか確かめてみるとか、ビルの上から飛んでみるとかあるんですけどね。日本のテレビ局からクラウドファンディングマニアとして取材を受けた時に、それを口実にプロトタイプを借りて、2回ほど使ってみました。残念ながら明晰夢は見られませんでしたが、普段は起きたら一切覚えていない夢の内容を覚えていたんです。自分にとっては新鮮な体験だったので、製品版が届くのが待ち遠しいですね。

※クリストファー・ノーラン監督による映画作品。人の夢の中に侵入して、情報を盗み出すスパイを描いたSF映画

あとは最後まで悩んで支援しなかったけど、後になって「支援しておけばよかった」と思ったのは、eVscope。天体望遠鏡なんですけど、高感度センサーで画像処理をして、接眼部の小型有機ELディスプレイに映すという、これまでの天体望遠鏡をパワーアップさせたようなプロダクトです。すごく面白いのは「みんなでこの星を見よう」という指令がアプリから届いて、みんなで観測したデータを研究機関に届けて研究に役立てようということもやっている。すごく夢があるんですけど、1500ドル(約16万円)もするので迷った末やめました。でも、やればよかったかな。

あと、今一番届くのが待ち遠しいのはSTORYという壁掛け時計のプロジェクトで、秒針が宙に浮かんだ鉄球なんです。時計としてだけでなく、カウントダウンタイマーにも使えるんですけど、壁掛けにした状態で玉が浮いているのが新しいですね。

自分がやりたいことを、他人任せにしないのがクラウドファンディング

松:クラウドファンディングでプロジェクトを始める人に共通しているのは、自分たちのやりたいことを他人任せにせず、一歩踏み出して世の中に問いかけているということ。自分から「これをやりたい」と発信しない限り、プロジェクトは始まらないんです。

Kibidangoのプロジェクトで言えば山梨県の電動乗り物メーカーの会社が、折りたたみ電動バイクのプロジェクトを始めました。そのメーカーは海外から輸入した乗り物を日本で運転できるようにカスタマイズして販売しているのですが、日本の道路運送車両法を守っていない海外製の電動バイクが国内に数多く出回っていることに強く問題意識を持っていたことが、プロジェクトを始めたきっかけなんです。

他にもKibidango独自の機能で、クラウドファンディングを始める前からプロジェクトをPRできる「プロジェクトの種」という機能があるのですが、ここで開発の進捗を発信しながらフォロワーを集めているんです。最近だと、しょうゆなどの汚れや匂いを水で濡らして光に当てるだけで落とせる機能や汗ジミ防止など10種類の機能を持ったTシャツを開発しているアパレルベンチャーのhapが利用しています。

あとはものづくりではありませんが、害獣被害に悩む熊本の農家の人達が集まって、自分たちの農作物をリターンにしてイノシシを捕まえるためのわなを買うプロジェクトがあります。このプロジェクトが始まった背景は、ハンターが高齢化で減少しているのに温暖化で害獣が増えていて、なんとかしたいという危機感からスタートしています。

今後は何億も資金を調達するようなプロジェクトではなく、少し先にある自分がやりたいことを着実に実現させるプロジェクトに力を入れることで、クラウドファンディングという選択肢をもっと多くの人が選べるような状況を事業者としても作っていきたいと思います。

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