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年末特集2017

億単位で資金調達しても成功するとは限らない——クラウドファンディングが目指すべき道筋とは【年末特集】

——初期に支援してくれた人たちと一緒に製品化を目指すというのも、クラウドファンディングをスタートアップが利用するメリットですよね。その要素だけを参考にして、規模を小さくしてリスクも軽減させたということですね

松:何か一つ選択肢を誤ると大きな問題に発展してしまい、ユーザーにも迷惑をかける——そうした出来事を、クラウドファンディングというオープンな場所で目の当たりにする機会が多かったのが、この1、2年だったのかなと思います。

こうしたトラブルの影響もあって、Kickstarterもハードウェアのプロジェクトはプロトタイプが無ければ認めないし、CGによる製品イメージはダメといった条件をつけて厳しくしています。失敗も含め、さまざまな事例の共有を通じて、どうやって成功していくかという議論ができる段階にステップアップして、市場自体も成長したのかなというのが、2017年のクラウドファンディングだったと思います。

翻って日本はどうかというと、Kickstarterが日本でも使えるようになったことで相談も増えましたし、期待値の高さは感じていますが、クラウドファンディングを選ぶ人はまだ一握りで、挑戦意欲が高い人に限られていると感じます。一事業者としては、クラウドファンディングに対するハードルを下げていきたいと思います。

本当に目指すべき市場のためのクラウドファンディング

Vie StyleのCEO今村泰彦氏(2016年撮影) Vie StyleのCEO今村泰彦氏(2016年撮影)

松:今、クラウドファンディングを経て活躍しているスタートアップの傾向としては、なまじ大きい日本市場だけを見るのではなくて、グローバルでの競争力を意識して世界に目を向けている人が多いと思います。
具体的にはアメリカを拠点にしてウェアラブルディスプレイを開発しているVufineや、ヘッドフォンに続いてインナーイヤフォンのプロジェクトをKickstarterで立ち上げたVIE STYLE、ReadyForを使っていた排泄予知デバイスのDFreeも海外で治験を進めています。これからに期待という意味では、パーソナルアシスタントロボットのPLEN Roboticsも外国人を積極的に採用し、海外に打って出ていけるチーム構成で開発して、きびだんごを始め国内外のクラウドファンディングで資金調達をしています。

——クラウドファンディングのあり方や市場環境も変化していく中で、2018年以降クラウドファンディングはどうなる、どうあるべきと考えていますか

スタートアップや大企業だけでなく、中小企業が積極的にクラウドファンディングを活用するケースを増やすことが重要だと松崎氏は語る。 スタートアップや大企業だけでなく、中小企業が積極的にクラウドファンディングを活用するケースを増やすことが重要だと松崎氏は語る。

松:何十万社とベンチャーやスタートアップがいる中で、大きな脚光を浴びることはなくても素晴らしい事業に取り組んでいる企業はたくさんいるわけです。そういう人たちが自分たちの夢を少しずつ着実に実現できる場であるべきだと思います。

——利用者側の裾野も増えていくと思いますか

松:いいえ、そこは大きく変わらないと思います。クラウドファンディングは一般の人というよりも、新しいものが好きなアーリーアダプターが集まる場でいいと思います。ただ、いきなり一般の人を相手にする市場に出す前にクラウドファンディングに出すことで、品質面やユーザーとのコミュニケーションなど気をつけるべき点をアーリーアダプターから学ぶ——スパーリングを受けてからデビューするといった過程として機能することは、すごく大事なことだと思います。

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