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ロビットインタビュー

量産未経験から国内で3万台出荷——めざましカーテン「mornin’」はどうチャレンジしてきたのか

小型切削機や加工機の導入で試作開発と検証を早める

——ベンチャーには珍しく、オフィス内に小型切削機や加工機がありますね。

高橋:メンバーが4、5人だった頃は、文京区の一室で卓上タイプのCNCや3Dプリンター、ボール盤を使って開発していましたが、より精度を高めていく段階で板橋区に引っ越してから小型切削機や加工機を導入しました。高価なロボドリルを新品で購入する余裕はなく、程度の良い中古品を見つけてきて、平野が壊れた部品を直しながら使っていました。

mornin’のような機構がある製品になると、微妙なサイズ調整が必要になってきます。寸法が性能に影響してくるんですよね。例えば、10ミクロンほどの寸法を調整しながら、取り付けやすさを検証し、また10ミクロン変えないといけないこともあります。製品の最適なパラメーターを見つけ出すために、何度も検証を繰り返すことが必要でした。しかし、寸法の調整を外注してしまうと最低でも発送等を含めて3日くらい時間がかかってしまいます。

オフィス1階にある加工設備の一部。 オフィス1階にある加工設備の一部。
小型切削加工機を操作する平野氏。 小型切削加工機を操作する平野氏。

平野:寸法の調整が社内でできると3日かかるところを1時間に短縮できるので、品質を高めながら、時間を短縮できることが可能になってきます。オフィスに小型切削加工機を導入したことで、検証、改修のフィードバックが早くなりました。夜に発覚した問題を改善して、翌朝には検証できます。

——どうして、そこまでスピードにこだわるんですか。

高橋:取り付ける対象が規格化されていない上に寸法の種類も多い。規格化されていないカーテンレールの条件に合わせながら、機構も含まれるものをベンチャーが初めて作ると、長くて3年くらいかかってしまう。その間に、もしかしたら他社が発表してしまうかもしれないし、何よりも自分たち自身でmornin’を良いアイデアだと思っているので、とにかく早く世の中に出したかった。この強い気持ちがスピードを一番速めようとしていた気がします。

オフィス2階のデスクワークスペース。 オフィス2階のデスクワークスペース。

——開発で苦労したところはありますか。

高橋:mornin’は、カーテンレールに対してタイヤが常に押し付けられる仕組みになっています。 カーテンレールに合ったタイヤのゴムを選ぶのに苦労しました。実際に指でタイヤを押してみると分かるんですが、中にバネが入っています。カーテンレールとバネを支えている樹脂部品に圧力が直接かかり続けます。バネの圧力が強すぎると樹脂部品に負荷がかかり耐久性も落ちるだけでなく、取り付けるときも特に女性の力だと難しくなってきます。部品への負荷と取り付けやすさの点では、バネはあまり強くないのが理想です。

カーテンレールに取り付ける機構の最初の試作。 カーテンレールに取り付ける機構の最初の試作。

——カーテンにも重さや質感に違いがありますよね。開閉に影響はありませんか。

高橋:重いカーテンや手で開け閉めしにくいカーテンレールもあります。これを考慮すると、モーターの力の強さが重要になってきますが、力の強い高性能なモーターは原価コストが高くなって理想の販売価格で売れなくなってしまいます。モーターの力強さと原価コストのちょうどいいバランスを探るために、何度も試作開発を行って検証する必要がありました。

販売価格をお求め安い価格帯にするために、一定の原価の中でベストな部品を選ばなくてはいけません。部品のスペックシートからだけでは分からないこともあり、10社以上のメーカーからモーターを取り寄せて、耐久性や量産時の歩留まりや精度を地道に検証しました。検証に時間をかけた分、コスト的にも性能的にもベストな部品を見つけることができました。

いつでも検証できるように作業場に設置されているさまざまなカーテンレール。 いつでも検証できるように作業場に設置されているさまざまなカーテンレール。

——何種類のカーテンレールを検証したんでしょうか。

高橋:カーテンレールは100種類以上購入して検証しています。カーテンレールって同じように見えても、サイズや質感が違います。ご家庭に設置してある多種多様なカーテンレールのサイズや質感に合うように、国内に出回っているカーテンレールをとことん会社に取り寄せて、製品の動作確認だけでなく、女性でも簡単に取り付けられるように気を使って開発しています。

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