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業務後だって本気でものづくり——トヨタの技術者がサークルをつくったら、未来の乗り物が動き出す

「日曜大工」とは、大工ではないが週末だけ工作を楽しむ人を指す言葉だ。しかし、平日の日中も業務として製造に携わりながら、休みの時にも、ものづくりに力を注ぐ人たちも少なくない。同じ企業内でメンバーを集め部活のようにものづくりに取り組んだ活動の成果を、Maker Faireなどのイベントや各種コンテストで見る機会も増えてきた。

企業内でのサークル的な活動を行うにあたり、本業との切り分けや、仲間集めにはどのように取り組んでいるのだろうか? トヨタ社員を中心として構成される、トヨタ自動車の社内有志団体「MONO Creator’s Lab」のメンバーにお話を伺った。

クルマのエンジニアが本気を出すと、見たことの無いものができた

赤いボディが特徴的な車いす型の乗り物「Exo-Wheel」。“乗るのではなく、装着する“ことをコンセプトに開発され、体の傾きや指先だけでの操作を可能にしたことで、日常生活だけではなくスポーツでも利用できる。大人一人を乗せてもびくともしない頑丈さ、そしてスムーズな駆動は、このまま市販されていてもおかしくないほどのクオリティを誇り、日本最大級のハードウェアコンテストGUGEN2016においてGood Idea賞を獲得した。

群を抜いた完成度のExo-Wheelを手掛けたのは、トヨタ自動車の社員で構成されたチーム「P-Robo204(当時)」。業務の一環として作られたものと思いきや、本業とは完全に切り離された有志による取り組みだという。

今回お話を伺ったのは、トヨタ自動車の大槻将久さん。普段はパートナーロボット部で、医療介護用途のロボットの開発に従事している。

——社内チーム「P-Robo204」の活動はどのようにして始まったのでしょうか。

トヨタのインフォーマル団体である「トヨタ技術会」が主催する社内アイデアコンテストが毎年開催されています。50年以上の長い歴史を持つコンテストで、基本的には部署ごとにチームを作って参加し、アイデア審査を通過すると製作補助が支給され実際の製作に移ることになります。

私がパートナーロボット部に異動したのは4年前なのですが、ごく周りの人間2,3人だけでスタートしてから徐々に人が集まり、洗車ロボットみたいなものを作ってコンテストに出していました。あくまで業務とは切り離されているので、やたら忙しくなるという噂も広がっていましたが(笑)、続けているうちにパートナーロボット部のメンバーが関わってくれるようになってきたんです。作業場所についても、会議室の隅で作業していたのを見た部長が気を利かせてくれて、社内の倉庫スペースを使わせてもらえるようになったんです。チーム名の「204」はその倉庫の名前ですね。

モビリティの簡単な試走ができるほどの広いスペースが活動拠点だ。 モビリティの簡単な試走ができるほどの広いスペースが活動拠点だ。

コンテストは毎年11月の「TES(トヨタ技術会)フェスティバル」に実物を出すのがゴールなので、直前1カ月くらいになると有給休暇を使って作業することもありますが、それまでは面白そうなものを買って自由に試したりしています。社内のメンバーも活動については理解しているので、風通しはとても良いですよ。

——製作の分担などはどのように決めているのですか?

あまりカッチリとは決めていません。終業後に続々とメンバーが集まってきて、「今日は僕これやります」みたいな感じでやることが決まっていきます。

写真右はパートナーロボット部の坂本哲平さん。部署内でたまたま知り合い、チームに参加するようになったという 写真右はパートナーロボット部の坂本哲平さん。部署内でたまたま知り合い、チームに参加するようになったという

うちの部署はロボットを作っているので、メカと電気とソフトまで一通りできるメンバーがそろっているんですね。また、部署全体で300人と比較的少ない人数なので、製作の過程でできないことがあると、その部分を専門とする人に聞いたり、一時的に手伝ってもらったりすることができます。そうして徐々にメンバーが増え続け、今は全部で15人くらいが参加しています。

また、普段の業務だと、ソフトウェアはソフトウェア、回路設計は回路設計と、役割が縦割りで固定されていますが、こちらは完全に自主的な活動なので、みんな自由にいろいろ取り組んでいますね。業務では電気をやっている人がメカに挑戦してみたり、もっぱらハードウェアだった人がプログラムを書いたりしていますが、これが結果として普段の業務にも生かされることもあるようです。

——もともと社内コンテスト向けに作られていたExo-Wheelですが、外部のイベントにも出展されていますよね。

チームのメンバーがたまたま「Ogaki Mini Maker Faire 2016」のことを知っていて、とりあえず出してみようとなったのがきっかけです。その後、GUGENコンテストや「Maker Faire Tokyo 2017」にも出展し、合計で1000人くらいに体験してもらうことができました。

一般の方も来場するイベントだと、子どもがいろいろむちゃな使い方をしたりするので、強度の問題なども見えてきます。また、普段から車いすを利用している方や、身体機能の回復をサポートする作業療法士や理学療法士の方もいらっしゃり、踏み込んだ内容のフィードバックをもらうこともありました。普段あまり出会うことのない人々とつながれることには魅力を感じます。


その後、Exo-Wheelはコンテストでの受賞やテレビへの出演なども果たし、大きな話題を呼んだ。この頃にはメンバーの異動などもあり、パーソナルロボット部だけの活動ではなくなったため、P-Robo204は「MONO Creator’s Lab」に名前を変え、新たなスタートを切ることになる。

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