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Formlabs、新しい光造形システムを搭載した3Dプリンター「Form 3」「Form 3L」および試作向け高速造形レジンを発表

Formlabsは2019年4月3日、SLA(光造形)方式3Dプリンター「Form 2」の後継機種となる新製品「Form 3」「Form 3L」を発表した。LFS(Low Force Stereolithography)と呼ぶ独自の機構により、プリント解像度はForm 2と同じながら造型物の精度と均一性を向上させた。また、Form 3LはForm 3比で約5倍の容積となる大きな造形が可能。同時に発表された紫外線硬化樹脂「Draft Resin」は、スピードが要求される試作向けの樹脂で、従来の樹脂と比べ3~4倍高速にプリントできる。

「Form 3」「Form 3L」は2019年後半に日本でも販売

Formlabsは2012年にKickstarterで最初のSLA方式3Dプリンター「Form 1」を発表し300万ドル(約3億円)を集めて注目された。Form 1はそれまで産業用SLA方式3Dプリンターに使われていた、レーザー光をガルバノミラーで反射させて走査する光学機構を搭載しながら産業用3Dプリンターの約100分の1という価格と高精度が評判となり、2015年には改良型のForm 2を発売、これまでに合わせて4万台以上を出荷している。

今回発表したForm 3とForm 3Lは、Form 2の後継となる3Dプリンター。レーザー出力はForm 2と同じ250mWだが、レーザー光のスポット径は従来の140nmから85nmに絞っている。最大造形サイズはForm 2の145×145×175mm(幅×奥行き×高さ)に対し、Form 3が145×145×185mm、Form 3Lは335×200×300mm。積層ピッチは25~300μm(Form 2は25~200μmだったが、ファームウェアのアップデートで同等となる)。外形サイズと重さはForm 3が405×375×530mmで17.5kg、Form 3Lが775×520×735mmで48kg。インターフェースはForm 3/3Lともにイーサネット(1Gbps)、Wi-Fi(2.4/5GHz)、USB 2.0。コントロールパネルは5.5インチのタッチスクリーン対応液晶ディスプレイ(1280×720ドット)。このほか、Form 3はレーザー発振器を1つ搭載するが、Form 3Lは2つを搭載する。

価格はForm 3が3499ドル(約39万円)、Form 3Lが9999ドル(約111万円)。Form 3は北米では出荷が始まったが、Form 3Lは2019年第4四半期に出荷開始予定。なお、日本を含むアジアパシフィック地域では2019年後半に販売開始の予定で、日本での価格は未定。Form 2は併売する。

独自の光学系機構LFS

Form 2はじめ多くのSLA方式3Dプリンターでは、光硬化樹脂を底が透明なトレーに注ぎ、底面からレーザー光を当てることにより硬化させる構造を採用している。レーザー発振器は固定されていて、レーザー光はガルバノミラーと呼ばれる鏡によって反射されることで、硬化する面を走査する仕組みだ。硬化の際、レーザー光によって硬化した樹脂がトレーの底面にくっついてしまうので、積層面(レイヤー)の硬化が終わるごとに造型物を引き上げると共に、造型物とトレーの底の間に光硬化樹脂が均一に行き渡るのを待つ必要がある。

今回Form 3/3Lが搭載するLFSでは、レーザー発振器と反射鏡を内蔵したLPU(Light Processing Unit)を動かすことと、光硬化樹脂を入れるトレーの底面が柔らかい素材でできており、たわむことが特徴。LPUはX軸方向にのみ移動し、Y軸方向には鏡で反射させることによりレーザー光を照射する。従来のガルバノミラー方式では構造上、造形面の端の部分にはレーザー光が斜めに当たることになり、造形面中心部に比べると造形精度がやや落ちる。これに対してLFSでは端の部分においてもレーザー光をより高精度に照射できるとしている。

またLPUの上部には2つのローラーがあり、このローラーがトレー底面と接することで、たわむ底面をピンと張るような仕組みになっている。LPUが移動することによってレーザー光を照射して硬化する部分の樹脂だけがトレー底面と接し、硬化後は底面がたわむことで底面と剥がれる形になる。一般的なSLA方式のように、積層面全体の硬化が終わった後で造型物をトレー底面から引き剥がす力をかける必要がないことが、Low Force Stereolithographyの由来となっている。Form 2では、積層面硬化後に造型物を引き上げた後、樹脂を行き渡らせるためにかき混ぜるワイパーという機構を搭載していたが、LFSではワイパーとかき混ぜる動作は不要となり、プリント速度の向上に寄与しているという。

なおForm 3Lは2つのLPUを搭載しているが、これらは2つ並んで配置されており、それぞれレーザー光を照射できるが、X方向へは2つが一緒に移動する。ユーザーは3Dプリント時にレーザー発振器の数を意識する必要はなく、スライサー/プリントソフトウェアである「PreForm」が自動的に最適なプリントを行う。

「Draft Resin」

Draft Resinは、FFF(熱溶解積層)方式プリンターと比較して、これまでSLA方式3Dプリンターの弱点とされることが多かったプリント速度の改善を図った光硬化樹脂。300μmという光造形方式3Dプリンターとしては大きな積層ピッチを設定することで、従来の光硬化樹脂と比べ3~4倍の速度でプリントできる。Form 2でもファームウェアのアップデートを行うことで、積層ピッチを300μmに設定可能になりDraft Resinを利用することができる。価格は従来の標準的な樹脂と同じ149ドル(約1万6600円)。

※記事初出時、文中に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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