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AIに記憶を持たせ処理速度を向上させる「超次元コンピューティング理論」

Graphic courtesy of Perception and Robotics Group, University of Maryland.

AIに人間のような記憶を持たせることで、その「感覚運動表現」(※ロボットのような主体が知覚を得て、それに応じて行動すること)の性能を抜本的に向上させられる可能性があることを、メリーランド大学の研究者たちが『Science Robotics』で発表した。

感覚運動表現、例えばボールを知覚し、それをバットで打つことは、現時点ではまだAIより人間の方が得意だ。人間の知覚は、脳や筋肉記憶(muscle memory)なるものとシームレスにつながり、外界の出来事への素早い反応を促すからだ。

一方でロボットは、センサーから得たデータを運動機能に結びつけるために、システム間連携が必要だ。ロボットの場合、センサーとアクチュエーターを中央学習メカニズムがつないでいる。その上、筋肉記憶に相当するものがないため、外界の出来事への対処が人間より遅くなる。

そこでメリーランド大学の研究者たちは、「超次元コンピューティング理論」を使って、ロボットの知覚と運動機能を統合することを考案した。この融合は「アクティブ知覚」として知られており、ロボットの感覚運動表現の速度を抜本的に改善し得ると言われている。

この新しい理論では、ロボットのオペレーティングシステム(OS)は超次元バイナリベクトル(HBVs:Hyperdimensional Binary Vectors)に依拠する。超次元バイナリベクトルは、まばらで非常に高次元の空間に存在し、画像、概念、音、指令など、異種離散的なものを表すことができる。

HBVsに基づくシステムでは、各モダリティを1と0の長いベクトルで等しい次元で結び付ける。それにより、行為可能性、感覚入力、その他の情報に同じ空間を占めさせ、同じ言語のうちに置き、融合することで、ロボットにとっての記憶なるものを作り上げる。

具体的には、例えばドローンの飛行中にダイナミックビジョンセンサーで記録された出来事情報から、出来事の画像と3Dモーションベクトルが算出された後で、それらが共にバイナリベクトルとしてエンコードされ、特別なベクトル演算で組み合わされると、記憶が生み出される。その後、新しい出来事の画像が与えられると、関連する3Dモーションが記憶から呼び起こされる。

今回の研究成果は、ロボット工学の領域を超えて、ニューラルネットワークベースのAIの性能向上にも役立つだろう。研究論文の執筆者の1人であるAnton Mitrokhin氏は、「ニューラルネットワークベースのAIは、記憶ができないので処理速度が遅い。それに対して、私たちの超次元理論の手法は記憶を生み出すことで、タスク処理のための計算量を今よりもはるかに少なくする。それにより、AIの処理性能を大幅に向上させることができる」と、その可能性を説明している。

fabcross for エンジニアより転載)

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