大林組、3Dプリンター用特殊モルタルと超高強度繊維補強コンクリートとの複合構造を開発——シェル型ベンチの製造に着手
2019/09/06 13:30
大林組は、3Dプリンター用特殊モルタルと、同社の超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」とを一体化する構造を開発し、セメント系材料を用いた3Dプリンターで構造物の製造に着手した。
同社は、ロボットアームに取り付けたノズルから3Dプリンター用特殊モルタルを吐出し、積層造形する3Dプリンターを2017年に開発している。
セメント系材料を構造物に用いる際には、引張力を負担する鉄筋などの鋼材と組み合わせた複合構造とする必要がある。セメント系材料を用いた3Dプリンターの実用化においても、この引張力の負担方法が課題となっていた。
今回同社は、外形を3Dプリンター用特殊モルタルで製造した構造物の内部に、引張力を負担できるスリムクリートを流し込む複合構造を開発。その実証として、セメント系材料を用いた、3Dプリンターでは国内最大規模の構造物となるシェル型ベンチの製造に着手した。
シェル型ベンチの寸法は7000(幅)×5000(奥行き)×2500(高さ)mm。12ピースの部材に分割して製造し、部材完成後に設置場所に据え付ける。2019年10月末の完成を予定しており、完成後に暴露試験を実施して耐久性などを評価する。
スリムクリートは常温硬化型のモルタル材料で、圧縮強度180N/平方ミリメートル、引張強度8.8N/平方ミリメートル、曲げ強度32.6N/平方ミリメートルを達成できる。引張強度が高く単独でも構造物として使用できるだけでなく、自己充てん性を有するため、特殊モルタルで製造した外形の内部に流し込む作業も容易で、鉄筋を人力で配筋する場合と比較して作業の軽減が可能だ。
従来は特殊モルタルの吐出を途中停止できず、積層経路が一筆書きとなる制約があった。ロボットアームとポンプの連動制御により、吐出の開始と停止を自由に実行でき、一筆書きによらない積層経路による自由な積層造形が実現。積層経路は三次元の設計データから自動的に生成され、大型ロボットアーム(アーム長約3.0m)の導入による大型部材の製造も可能となった。
シェル型ベンチのデザインには、「型枠を使用せずに、複雑な形状の部材を製造できる」という3Dプリンターの特長を活かし、曲面や中空を取り入れている。
また内部構造の形態検討には、骨のように軽量で丈夫な形態を導出できるトポロジー最適化を採用。内部構造の中空部分を決定した結果、内部を密実とした場合と比較して、構造性能を損なうことなく重量を約50%軽量化することに成功している。