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マイクロ波を電気に変換する高感度ダイオードを開発——無電源でのインフラモニタリングが可能に

開発された高感度整流素子による環境発電で、専用バッテリ無しでセンサネットワーク構築

科学技術振興機構と富士通、首都大学東京の共同研究チームが、ナノワイヤ形状のバックワードダイオードを用い、微弱な電波を電気に変換できる、高感度な整流素子を開発した。5G通信時代の到来により豊富に存在することになる微弱電波を、環境発電(エネルギーハーベスティング)に活用できると期待される。研究成果は、2019年9月26日にポーランドで開催された固体デバイス研究に関する国際会議(ESSDERC)で公表された。

本格的な5G通信やIoT時代の到来を前にして、基地局から発信される微弱電波(マイクロ波)を電気に変換する環境発電技術が注目されている。環境中の電波から発電する装置には、電波を集めるアンテナと、電波を整流するダイオードが必要になるが、マイクロ波に対するダイオードの感度は、整流特性の急峻性と浮遊容量に大きく依存する。一般に、電力変換用のダイオードとしては、金属と半導体の接合における整流作用を利用する、ショットキーバリアダイオード(SBD)が用いられるが、SBDは、非常に低い電圧における整流作用が緩慢で、μW以下の微弱なマイクロ波に対する感度が充分でなく、環境中の電波を電気に変換するのは難しかった。

研究チームは、ゼロバイアスで急峻な整流作用を持つバックワードダイオード(BWD)に注目し、これを1μm以下のサイズに微細化して浮遊容量を低減することにチャレンジした。これまでのBWDは、化合物半導体を積層した薄膜から、エッチングにより加工されてきたが、研究チームは逆の発想として結晶成長法を用い、n型InAsとp型GaAsSbの接合を直径150nmのナノワイヤ結晶に成長させた。そして、化学組成および不純物濃度を高精度に調整することにより、BWD特性を得るのに必要なトンネル接合を形成することに成功した。更に、ナノワイヤの周囲を絶縁材料で覆い、ナノワイヤの両端に金属の電極を形成することができた。

現在の通信規格4G LTEおよびWi-Fi用2.4GHzのマイクロ波周波数において実証試験を行った結果、通常のSBDの感度が60kV/Wであるのに対して、開発素子においては700kV/Wと約11倍の感度が得られた。100nWクラスの微弱電波を効率的に電気に変換できるため、携帯電話の通話可能エリアの10%に相当する地域で、微弱電波の電力変換が可能になるという。

応用例として、構造物や建造物などのインフラのモニタリングに用いられるセンサネットワークを、無電源で構築できると期待される。今後、研究チームは、ダイオードおよびアンテナの設計を最適化し、定電圧の電力制御装置を追加する予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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