どちらの結び方が強いのか?——MIT、結び目の安定性を予測する数学モデルを作成
2020/02/24 09:00
マサチューセッツ工科大学の数学者とエンジニアが、ロープが引っ張られたときに、どのような結び目が安定なのかを予測する数学モデルを作成した。この研究は2020年1月3日、『Science』誌に掲載された。
セーリングやロッククライミング、建設工事など、ロープを使用するあらゆる活動において、特定の結び方によって作る結び目が、他よりも強く安定していることが何世紀にもわたる経験から知られている。しかし、なぜ特定の結び目が他の結び目よりも高い安定性を持つのか、これまでほとんど解明されていなかったという。
今回の研究は、同大の数学と機械工学の研究者たちが協力したものだ。機械工学者のグループが2018年に、引っ張るとその歪みや圧力に応じて色が変化する伸縮性繊維を開発した。これを知った数学者が、結び目の安定性の研究にこの繊維を使うことを思いついた。
研究チームは、この繊維を使って三葉結び目や8字結び目など、さまざまな結び目を作った。そして、繊維が強く引っ張られたときに、繊維に加えられた力と繊維の変色点を観察した。数学者のグループは以前、スパゲッティのまとまりを説明するための「スパゲッティモデル」を作成したことがあり、今回実験データに基づき、繊維の色と加えられた圧力とを相関させるカラーマップを、スパゲッティモデルに組み込んだ。
このモデルを用いて、実際に結んだのと同じ結び目をシミュレートしたところ、実験の結び目とシミュレーションの結び目の色のパターンがほぼ同じこと、すなわちこのモデルが結び目の応力分布を正確にシミュレートしていることを確認した。そして、より複雑な結び目をシミュレートし、どの結び目がより多くの圧力に耐え、他の結び目よりも強いかを記録した。
そして、さまざまな強さの結び目を比較することで、結び目の安定性を決定する特性を見出した。それによると、紐がより多く交差し、より多くの「ねじれ」(紐から紐への回転方向の変化)があると、結び目は強くなることが分かった。さらに、より多くの「循環」があれば、結び目がより強くなることも発見した。ここでいう循環は、2本の紐がお互い逆方向の向きに回される結び目のことだ。
このように単純化したルールによって、類似した2種類の結び目でも、なぜ一方が他方よりも強いのかを説明できるという。また、特定の用途に適したさまざまな強度の結び目を、この新しいモデルを使用して考案できる可能性がある。
(fabcross for エンジニアより転載)