機械学習で3Dプリントの造形精度を50%高める手法を開発——形状誤差データを学習するAI
2020/03/25 10:00
南カリフォルニア大学ビタビ(Viterbi)工学部の研究チームは、機械学習を活用して、3Dプリンターによる造形品質を向上させる技術を開発した。造形物の精度を50%以上改善することに成功し、より経済的でサステナブルな方法として期待できる。研究結果は、2020年1月13日付けの『IEEE Transactions on Automation Science and Engineering』に掲載されている。
製造業の未来を拓くと言われている付加製造(AM:Additive Manufacturing)技術である3Dプリントは、設計データから造形物を直接作ることができるため、メーカーは部品を外注することなく内製化できるというメリットがある。
ただし、ある程度の形状誤差が生じるため、最初から精度の高い完成品を得るのは容易ではない。材料はプリント中に膨張したり収縮したり、予期せぬ挙動を示すうえ、プリンターの性能や特性も品質に関係する。メーカーは所望の形状になるまで、何度も試行錯誤を重ねることになり、不良品や想定以上のコストが発生することも少なくない。
今回研究チームが開発した「3Dプリンティングの畳み込みモデリング(convolution modeling of 3-D printing)」には、新しい機械学習アルゴリズムやソフトウェアツール「PrintFixer」を含んでいる。
PrintFixerは過去の3Dプリントジョブから集めたデータを使ってAIをトレーニングし、形状誤差が発生する場所を予測する。データ数は最小限でよく、「5個から8個のオブジェクトから、たくさんの有用な情報を学ぶことができる。少ないデータを有効に活用して、さまざまなオブジェクトの予測ができる」と、Qiang Huang准教授は説明する。
研究チームは、航空宇宙製造用の金属材料から商業用の熱可塑性プラスチックまで、幅広い用途や材料に対して同等の精度になるようにモデルをトレーニングした。研究チームが開発したAIは、何回か経験すれば非常にはやく学習できるという。それはちょうど、野球を習ったことがある人なら、野球と似たソフトボールのようなスポーツはすぐに習得できるのに似ているという。
予測に基づき、誤差が許容範囲を超えそうな場所を示すことで、ユーザーは事前の修正が可能になる。研究チームは、実例として約50%以上の精度向上を示しているが、場合によっては、全体精度の向上は90%に達するとも示唆している。
彼らの最終的な目標は、3Dプリントをよりスマートにし、大企業から愛好家まで、すべての人がソフトウェアツールを使えるようにすることだという。世界中の人々が、データベースで出力結果を共有し、形状の誤差を正確に予測できるシステムを開発したいとしている。
(fabcross for エンジニアより転載)