薄型で伸縮自在なフルカラースキンディスプレイを開発——駆動/通信回路と電源を一体化 東大とDNP
2020/07/14 16:30
東京大学の染谷隆夫教授の研究チームと大日本印刷(DNP)は2020年7月13日、薄型で伸縮性を持つフルカラースキンディスプレイを開発したと発表した。
現在、フィルム状のフレキシブル基板は広く使われているが、繰り返しの「伸び縮み変形」ができなかった。また、従来の伸縮変更可能な電極配線は、素材の伸長時における電気抵抗の上昇や、繰り返し伸縮時に断線しやすいという課題があった。さらに、剛直な電子部品と柔軟な電極材料の接合部が伸縮時に破壊されやすいという課題もあった。
今回の開発では、独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術を進展させ、薄型かつ伸縮自在なフルカラーのスキンディスプレイと、駆動や通信回路、および電源を一体化した表示デバイスの製造に成功した。
独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術は、柔軟な基材を曲げ伸ばししても抵抗値が変化しない電極配線が可能だ。また、剛直な電子部品を実装しても伸縮時に断線しにくい工夫が盛り込まれているという。
今回当該実装技術の有効性実証を兼ねて、1.5mm角サイズのフルカラーLEDを12×12個(画素数144)を薄いゴムシートに埋め込んだスキンディスプレイを製作。LEDは2.5mm間隔で埋め込まれ、全体の厚さは約2mmだ。130%までの伸縮を繰り返しても電気的、機械的特性が損なわれないことを確認した。また、薄型/軽量で伸縮自在なために、皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げず、皮膚以外のさまざまな曲面に貼り付けることもできる。
開発したフルカラースキンディスプレイの表示部の駆動電圧は3Vで、表示スピードは60Hz、最大消費電力は平均100mWである。フルカラーLEDの搭載により、9000色以上の色表現ができる。表示エリアの外周近くに制御回路とバッテリーを実装しているので配線ケーブルは不要。外部からBLE(Bluetooth Low Energy)通信によって表示内容を制御できる。
今回開発したスキンディスプレイは、通信や駆動回路、電源までを一体化したことで、スタンドアローンで稼働する新しい形のコミュニケーションツールとして発展していく可能性があるという。DNPでは今後、体表面に近いところで表示するセンシングデバイスのコミュニケーションに与える効果の研究を続けると共に、スキンエレクトロニクスの実用化検証を開始する。
(fabcross for エンジニアより転載)