リモートエピタキシャル成長でフレキシブルなマイクロLEDを製造する手法を開発
2020/10/24 08:00
テキサス大学ダラス校(UT Dallas)を中心とする国際研究チームが、曲げたり捩じったり切断したりでき、曲面のある多様な表面に貼り付けることが可能なマイクロLEDを作製する手法を開発した。サファイア基板上にグラフェン層を挟んで、GaNの薄膜層をリモートエピタキシャル成長させ、GaN薄膜層を基板から剥離させることで、柔軟性の高いフレキシブルなマイクロLEDが得られる。研究成果が、2020年6月3日の『Science Advances』誌にオンライン公開されている。
ブレーキランプから広告塔まで広範囲の製品に用いられているLEDは、鮮明な画像を高い応答速度と低消費電力で実現できる。そして従来にない応用範囲として、スマートフォンやテレビ、パソコン用モニター用途に、数μmレベルまで微細化されたマイクロLEDの開発が進められている。しかしながらマイクロLEDも通常LEDと同様、脆くて柔軟性に乏しく、通常平坦な表面上でしか使えないという課題があった。
UT Dallasの研究チームは、フレキシブルなマイクロLEDの開発を目指し、近年提案されているリモートエピタキシー技術に着目した。サファイア基板の上に単層グラフェンを配置し、その上にGaN薄膜層をエピタキシャル成長させた。単層のグラフェンであれば、エピタキシャル成長を妨げずに正常な結晶成長を実現できる。そしてグラフェン層はGaN薄膜層と化学結合してないため、あたかもベーキングシートのように、サファイア基板からGaN薄膜層を容易に剥離することができる。
こうして得られた薄いLED層は、曲げたり捩じったり切断することもできる高い柔軟性を備え、多様な曲面を持つ表面に貼り付けることができる。研究チームは、捩じったり曲げたりしわくちゃにする実証実験や、小さなレゴのフィギュアの足に接着する実証実験を行ったが、LED特性には影響を与えないことを確認している。柔軟な照明や衣服、ゴム、ウェアラブルな生体医療デバイスなど、多様な用途に可能性があると、研究チームは説明している。
この開発技術では、LEDは基板を壊すことなく剥離できるため、基板を繰り返し使うことができ、製造コストの観点からも、大きな長所がある。「基板は初期の機能を維持したまま、何回も使える」と、研究チームは語る。現在、開発技術を、他の材料系に対しても適用する研究を進めており、「この手法は1つの材料系に限定されない。全ての材料系に可能性がある」と期待している。
(fabcross for エンジニアより転載)