高齢者の危険運転低減に有効な認知機能トレーニングプログラムの実証研究——コンピューターを使い、低コストで提供可能
2021/10/02 07:00
最近行われた実証研究で、低コストのトレーニングプログラムによって、高齢者の危険運転を減らすことができることが分かった。この研究はノースカロライナ州立大学によるもので、2021年6月14日付で『Traffic Injury Prevention』に掲載された。
路上でのトレーニングやドライビングシミュレーターを使ったトレーニングプログラムは、高齢運転者の交通事故削減に成功しており、その効果はトレーニング後、何年も持続する。しかし、金銭的な理由から、マンツーマンの路上トレーニングや高性能のシミュレーターを利用できる高齢者はそれほど多くはない。
そこで研究者らは、危険検知時の注意過程を測定する方法として有効な「Drive Aware Task」に基づいて、コンピューターを使って行う、危険検知に焦点を当てた認知機能トレーニング手法を開発した。コンピューターを使ったトレーニングは実施するのが容易であり、コンピューターにアクセスできる高齢ドライバーにわずかな費用でトレーニングを提供できる。
研究チームが開発した「Drive Aware」はコンピューターを持っていれば誰でもアクセスでき、高齢者が道路の危険要素を正確に発見できるようにするための認知トレーニングプログラムとなっている。今回の研究では、Drive Awareのトレーニングを受けた人が実際に運転する際の運転行動に、Drive Awareがどの程度影響を与えるかを明らかにすることを目指した。
まず、研究チームは、Drive Awareをテストするために65歳以上の成人27名を集めた。参加者は全員、ドライビングシミュレーターで基準となる運転テストを受けた。その後、参加者のうち9名は「能動的トレーニング」群に振り分けられ、インタラクティブなDrive Awareトレーニングセッションを2回受けた。1回目と2回目のセッションは約1週間空けて実施された。他の参加者のうち9名は「受動的トレーニング」群に振り分けられ、他の参加者たちがDrive Awareトレーニングセッションを受けているビデオを見た。これも約1週間の間隔を空けて2回行われた。残りの参加者9名は対照群としてトレーニングは受けなかった。その後、参加者27名全員がドライビングシミュレーターで2回目の運転テストを受けた。
その結果、能動的トレーニング群では、トレーニング後に「危険なインシデント」が25%減少した。危険なインシデントとは、他の車両や歩行者との事故、道路からの逸脱などを指す。一方、受動的トレーニング群と対照群では、危険なインシデントの件数に統計的に有意な変化はみられなかった。
また、トレーニング後の調査結果から、高齢ドライバーたちがDrive Awareトレーニングプログラムを受け入れていることが示唆された。
研究チームは、今回の発見がトレーニング普及につながることを期待しているという。ただし、今回のテスト参加者数はかなり少ない。研究チームは、資金を確保できればテストの規模を拡大して、このトレーニングが高齢ドライバーの事故削減にどれだけ効果的であるかを、より明確に証明したいとしている。
(fabcross for エンジニアより転載)