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ナノ粒子から多孔質金属を生成する際に生じる問題を解決した、新しい自己組織化手法

Image: Penn Engineering Today

天然の木材は、強度密度比が高く、何百フィートもの高さに成長するほど頑丈であるが、伐採後に河川に浮かべて川下りができるほど軽いため、あらゆる場所で建築材として使用されている。

過去3年間、米ペンシルベニア大学のエンジニアたちは、「メタリックウッド」と名づけた素材を開発してきた。この素材の特性と名前は、木材の特徴である多孔性に由来するものだ。メタリックウッドは、ナノニッケル支柱が格子状に並び、細胞サイズの細孔が規則的な間隔で配置されているので、材料の強度を損なうことなく密度を劇的に低下させている。

細孔が緻密に間隔を空けて並んでいることは、メタリックウッドにわずかな重量でもチタンのような強度を与えるだけでなく、ユニークな光学特性ももたらしている。隙間の大きさが可視光の波長と同じなので、メタリックウッドから反射した光が干渉して特定の色を強調する。強調された色は、光が反射する角度によって変化するため、まばゆい外観となり、センサーとしての利用も期待できる。

しかし、このような特性をもたらすナノメートルサイズの規則的で緻密な特徴を維持しつつ、大きなサイズのナノ格子を作製することは難しい。今回、エンジニアたちは、メタリックウッド作製の妨げとなっている大きな問題を解決した。その問題とは、数百万個のナノ粒子から、建築に使用できる大きさの金属フィルムに成長させる際に生じる「逆クラック(inverted crack)」だ。

通常、材料にクラック(亀裂)が生じると、原子間の結合が切れて最後にはばらばらになる。一方、逆クラックとは原子が過剰に存在する状態だ。逆クラック生成の問題は、1990年代後半からこの分野において長年の課題となっていた。

メタリックウッドを作製するには、まずナノ粒子が乾燥して規則的に積み重なるまでナノ溶液の水分を蒸発させるが、水の表面張力が非常に強いため、粒子が引き裂かれて亀裂が生じる。ナノスケールの球体が規則的に積み重なったテンプレートにニッケルを蒸着させると、格子構造が球体周辺に形成されて最終的には特徴的な細孔になる。不規則に積み重なっている箇所があるとニッケルがその隙間を埋めてしまい、テンプレートを除去したときに逆クラックが生じる。

エンジニアたちは、逆クラックを発生させないよう、テンプレートを濡らしたままの状態で粒子を自己組織化するという手法を考案した。静電力を使って粒子を固定する必要はあるが、この手法で作製すると、同程度の密度の多孔質金属より強度は3倍で、他のナノ格子より1000倍大きい多孔質金属を作製できるという。

何十年もの間、悩まされてきたこの欠陥を防ぐことで、メタリックウッドのフィルムを従来より2万倍大きい面積で作製できるようになった。

この改善を実証する研究結果は、学術誌『Nature Materials』に2021年6月17日付で掲載された。

fabcross for エンジニアより転載)

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