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汗をかいた時に熱を逃がす、革新的なテキスタイルを開発

米デューク大学が開発した軽量素材は、乾いた状態では熱エネルギーを閉じ込めるが、汗をかき始めると小さな通気孔を開いて熱を逃がし、乾くと再び通気孔が閉じて熱を保持する。この素材は、エレクトロニクスではなく物理現象を利用することで通気孔が開閉する。そのため、衣服のパッチとして、さまざまな状況下で衣服内を快適に保つことができる可能性がある。

デューク大学の機械工学・材料科学助教授であるPo-Chun Hsu氏は、このような2つの性質を持つ素材を作成するにあたって、ナイロンに着目した。ナイロンは安価で軽くて柔らかい。また、ナイロンをフラップ状にカットすると、片面が水分に触れたときに少しずつカールすることを知っていた。

ナイロンは保温性に劣るため、Hsu氏は熱を逃がさないように銀の層を上に重ねた。当初、銀の重さでナイロン製のフラップの動きが悪くなることを予想し、できるだけ薄くしようとしていた。しかし、予想に反して銀を加えたことでフラップがよりカールしたのだという。さまざまな厚さを試した結果、50nm付近に最適な厚さのポイントを発見した。これ以上薄くしても反応が良くなることはなく、厚いと銀の重みで通気孔が開かなくなる。

実験では、人の手ほどの大きさのパッチに、指の爪程度の数ミリのフラップを付けた。この素材は、ポリエステルとスパンデックスを混合した一般的な繊維と比較すると、フラップを閉じた状態の乾燥時に約16%暖かく、フラップを開いた状態の湿潤時に約14%涼しくなった。つまり、ナイロンと銀のハイブリッド素材を使用することで、温熱快適域を30%拡大することができたということだ。この方法は、脇の下にファスナーを付けるなどの、従来の防寒着の熱を逃がす方法よりも優れているとHsu氏は言う。

「新しいレーザー切断方法を見つけて非常に小さなフラップを作ることができれば、普通の衣服と同じような見た目にできるだろう。また、熱特性を変えずに素材の色を自由に変えられるよう、表面にナノコンポジット層の使用も検討している」とHsu氏は語る。

この研究成果は、12月15日付の米国科学誌『Science Advances』に掲載された。

fabcross for エンジニアより転載)

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