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充電中に二酸化炭素を吸収するスーパーキャパシターを開発

ケンブリッジ大学の研究チームが、空気中から低コストで効率よく二酸化炭素(CO2)を吸着し貯蔵できるスーパーキャパシターを設計し、CO2捕捉容量を増大させることに成功した。

スーパーキャパシターの充電中にCO2を選択的に吸着し、放電の際にはCO2を制御して放出できるが、充電中の電圧負荷パターンを工夫することによって、CO2捕捉容量を増大できることを見出した。アミン加熱プロセスなど従来のCO2吸着方法に比べて消費エネルギーが少なく、また既存のバッテリーに比べて耐久性に優れている。電極や電解質を環境負荷の小さい安価で豊富な材料を用いて構成できる特長を持ち、気候変動問題に対するソリューションの1つとして期待される。研究成果が、2022年5月19日に『Nanoscale』誌に公開されている。

スーパーキャパシターは、数10mF以上の非常に大きな静電容量を持つコンデンサーの一種。誘電体の代わりに、電極と電解液の間の界面に形成される逆の極性を持つ層を利用し蓄電量を高めていることから、電気二重層コンデンサーとも呼ばれている。電力密度が高く製品寿命も長いことから、新しいクラスのエネルギー貯蔵装置として注目を集めている。

特に、電極の表面積を増大するために用いる多孔質の活性炭が、充放電の際の電子のやり取りと同時にCO2を吸脱着することから、近年スーパーキャパシターによる炭素分離固定技術(SSA:Supercapacitive Swing Adsorption)が注目されている。SSAは、CO2捕捉容量が比較的小さいことと、CO2分子の吸着メカニズムが良く理解されておらず、最適化が進んでないことが課題とされている。

研究チームは、ガス吸着現象を捉える圧力センサーを用い、スーパーキャパシターにおける電気化学反応とCO2ガス吸着現象を同時的に測定できるデバイスを考案。充電中の電圧負荷パターンがSSA性能に及ぼす影響を詳細に分析した。その結果、以前よりも充電時間を拡大して、時間をかけて負電圧と正電圧を交互に負荷させるなどの、新しい充電パターンによってCO2捕捉容量を2倍にできることを見出した。

開発したSSAは、電極間の電子のやりとりだけでCO2ガスの吸脱着が可能になるので、加熱や高圧負荷が必要なアミン加熱プロセスなどの炭素分離固定技術よりも消費エネルギーが少ない。また、化学反応を利用する再充電可能な既存バッテリーよりも、優れた耐久性や長い製品寿命を持つ。更には、活性炭電極は廃棄ココナッツの殻からでも得られ、また電解液は基本的に海水と同じであり、環境負荷が小さく、安価で豊富な原材料から構成できる特長を持つ。

「スーパーキャパシター内部で生じている正確なメカニズムを、ある程度、絞り込むことができたが、未だ不明な点も多く産業用にスケールアップする前に研究する課題は多い。今後、更なるメカニズムの解明とSSA性能改善に取り組む」と、研究チームは語る。

fabcross for エンジニアより転載)

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