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リチウムイオン電池の4倍の蓄電容量を持つ、室温作動型ナトリウム硫黄電池の開発

シドニー大学の研究チームが、リチウムイオン電池よりもはるかに高い蓄電容量を持つナトリウム硫黄(NAS)電池を開発した。同電池は、原料となるナトリウムや硫黄が豊富で安価であり、製造コストの大幅な削減が期待できる。また、リチウムイオン電池よりも有毒性が少なく、より容易なリサイクルが可能となる。

同研究成果は2022年10月29日、「Advanced Materials」誌に掲載された。

室温で動作するNAS電池は、50年以上前から研究されてきたが、蓄電容量の低さと繰り返し充放電における容量低下の速さが問題となり、実用化に至っていない。正極の電極活物質である硫黄の低い充填率や硫黄の流出によるシャトル効果が、問題の主な原因と考えられている。そこで研究チームは、硫黄と金属モリブデンの複合体を原子レベルで分散してグラフェンに担持し、硫黄の重量パーセント濃度80.9%という高い充填率の正極を持つNAS電池を作製した。

開発した同電池は、現在のリチウムイオン電池の約4倍の初期容量を示し、十分な電流量で1000サイクル使用した後でも初期容量の半分を維持した。さらに、同研究では、高い蓄電容量とサイクル安定性の要因を動作環境下のX線分光法による実験と理論計算によって調べた。その結果、モリブデンが非局在化した電子状態を形成したことにより、硫黄とナトリウムの可逆反応性が改善し、シャトル効果が軽減したことを明らかにした。

研究チームは今回、実験室規模の電池を作製し、高い性能を確認した。今後、大規模な商業化に向け、Ahレベル容量のラミネート電池作製に取り組むとしている。電池の高い蓄電容量と製造コストの安さは、電気自動車などの輸送用電源用途だけでなく、大規模な再生可能エネルギーを利用した電力網でのエネルギー貯蔵システムなど、さまざまな利用用途に需要がある。

fabcross for エンジニアより転載)

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