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ファンブレードを使わない小型低騒音メンブレンファンを開発——電子機器の冷却に最適

Photo: Strohmeyr, Institute for Design and Production in Precision Engineering, University of Stuttgart

コンピューターや携帯電話などの電子機器は、過熱を防ぐために冷却する必要がある。エンターテインメント機器やパワーエレクトロニクス機器などの冷却には、熱源に向けたファンを使用することが多いが、一般的に使われている形状の冷却ファンは機器に対して大型で、騒音も発生する。小型化のために直径を小さくすると、ファンブレードが吸い込む空気量が不足するため、ある程度の大きさが必要だ。

ドイツ・シュトゥットガルト大学の研究者らが電子機器を効率的に冷却するための革新的な小型メンブレン(薄膜)ファンを開発した。低エネルギーで騒音が最小限に抑えられ、コンパクトなサイズで、最新の電子機器の冷却に適したものだ。

ドライブ(記憶装置)やパワーエレクトロニクスなど、内部に熱源を持つ小型機器を冷却するには、気流が熱源に向かうよう的を絞った換気が不可欠だ。熱源は指向性の空気流と熱伝導によって冷却される。こうした冷却方法は、容易にアクセスできない場所にあるデバイスのホットスポットを冷やすためにも有用だ。

今回研究チームが開発した小型メンブレンファンは、永久磁石と2枚の弾性膜、その膜に取り付けられた2つの対向する励磁コイルで構成されている。コイルに正弦波電流が流れると、膜が上下方向に交互に引っ張られて開口部が開閉し、前方に向かう空気の流れが発生する。この仕組みによって発生する騒音を最小限に抑えられ、一般的な冷却ファン(30dBA)よりも静かになる。

励磁コイルの厚みは180μm以下と極めて薄く、フラットな設計でありながら、流速は2.5m/s以上と速いため、離れた場所にある熱源も効果的に冷却できる。また、消費電力はわずか25~75mWだ。

フレキシブルな設計により、コイルを膜に直接貼り付けているため、ファンをフラットに配置できる。また、膜を磁性体のフォイルとすれば、連続運転時にファンの耐用年数を延ばすことも可能だ。

研究チームは、本件の特許を出願中で、ドイツの大学の技術移転機関であるTechnologie-Lizenz-Büro (TLB) は、この画期的技術の商業化を委託されている。メーカーにライセンス供与やプロジェクト協力の機会を提供しているプロジェクト・パートナーとの共同により、さらなる発展が期待されている。

fabcross for エンジニアより転載)

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