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イベントレポート

新時代の触覚を開発せよ! ショッカソン2015潜入レポート

運営メンバーにインタビュー

全13チームが各々の個性を発揮させ、大盛り上がりとなったショッカソン2015。触覚という題材を用いたハッカソンを開催した経緯について、運営を担った富士ゼロックスの竹内伸さんとTMCNの伊藤武仙さんにお話を伺うことができた。

——完成した作品はどれもエンターテインメント性にあふれたものでしたね。

竹内さん「はっちゃけた作風は去年のショッカソンでも見ることができて、やっぱり触覚ってそういう楽しい雰囲気を誘発すると思うんですよね。触覚がらみでいろいろな会社の人と会って話をするときも、やっぱり究極の触覚っておっぱいだよねって話をしたりする(笑)。別にエロい意味だけではなくて、そういう安心感も含めて作風に影響しているんだと思います」 

伊藤武仙さん 伊藤武仙さん

伊藤さん「使用するセンサの特性上、自然と体験型の作品になるので必ずチームの誰かで試すことになりますよね。それですごく楽しんでいる雰囲気になるし、運営のメンバーも全力で楽しんでいる(笑)。だからどこかの企業がスポンサーについて、責任部署の人たちが嫌々やらされているようなハッカソンとは一線を画している。賞金もないし、参加者の皆さんも純粋にやりたい/楽しみたいという気持ちで集まってきてくれているのかな」

竹内さん「企業の課題解決っていうのも必要なんですよ。ただ、それだけでは昨今のMakersムーブメントでは届いていないような層にアプローチできない。もっと多くの人を巻き込んで底上げしていければいいなってことは思っています」 

触覚とハッカソンは、とても相性が良い?

竹内伸さん 竹内伸さん

竹内さん「私は企業で触覚技術の開発に携わっていたのですが、実は触覚って世の中に普及させるのがすごく難しいんですよ。なぜかというと、触覚っていうのはどうしても『コンテンツとデバイス』を一体で作らないといけないからです。

触覚は人間の身体中にあるので、その全てに対応するようなデバイスを作ることは難しい。どうしても身体の一部分にだけ対応するデバイスを開発することになり、それぞれのパートに最適化されたコンテンツが必要になるんです。そうなると、もはや触覚デバイスを作る人とコンテンツを作る人が別々ではうまくいかない。なんでも映るディスプレイを作って、そこで流す映像コンテンツは別の人が作る、というようにはいかないんです。

だから、触覚に関して勝手に良いコンテンツが生まれるってことは起きにくい。企業の中でデモやプレゼンをしても、その場ではすごく面白がられるんだけどなかなかその次に進めませんでした。それに対し、こういうハッカソンみたいな場では、実際にデバイスを使いながらコンテンツを作ることができます。オープンな場でのN対Nの関係も生かしながら、触覚をうまく普及させることができるんじゃないかっていうのが、このショッカソンの狙いの一つです」 

参加者はさまざまな触覚デバイスを体験しながらアイデアを考えることができる。 参加者はさまざまな触覚デバイスを体験しながらアイデアを考えることができる。

竹内さん「大学の先生に声をかけてみたら、やっぱりどこの先生も同じ悩みを持っているらしくて、みんな二つ返事で『ぜひやりましょう』と言ってくれました」

次回以降への展望

——ショッカソンの今後の展望について教えて下さい。

竹内さん「今回、アイデアソンのあった後にワークショップをたくさん入れ込んだんです。技術をしっかり理解して、それから作ってもらうっていうのを植え付けたくて。ビジネスモデルありきではない、技術にしっかり足のついたハッカソンにしていきたいと思っています」

伊藤さん「電気通信大学の梶本先生がおっしゃっていたんですけど、研究題材をショッカソンのために開発ツールとして仕上げたら、それがすごく良かったと。自分の学生たちにも教えやすくなるし、キットとしてオープンにすることで外部との接点も生まれていく」

竹内さん「アカデミックな場って、技術を普及させることがミッションではないんですよ。どうしても、技術の基本形を作ったら論文や特許の形でまとめることで完了してしまう。でもそれだけでは産業とのギャップがあるし、とくに触覚だとその差を埋めないと何も生まれない。ハッカソンの場に技術を出すことには、まさにそのギャップを解消する効果がありますよね」

——技術を提供する大学や企業側にも大きな収穫があるのですね。

竹内さん「今後は特定の触覚技術にフォーカスした、ミニショッカソンのようなものを年に何度か開催していきたいです。技術が開発されただけで終わるのではなく、そこに参加した人がまた別のコミュニティに触覚を伝播していくような、継続につながるイベントを作りたいなと思っています」 

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