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SOLIDWORKS WORLD 2016レポート

SOLIDWORKSユーザーイベントで見た、3D CADを使ったものづくりのこれから

商用3D CADとして、世界に500万人のユーザーがおり、日本でも製造業を中心に大きなシェアを持つ「SOLIDWORKS」。そのSOLIDWORKSのユーザー/パートナーが世界から集まる年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS WORLD 2016(SWW2016)」(主催:米Dassault Systemes Solidworks)が、2016年2月1日から3日まで米国テキサス州ダラスで開催された。SWW2016のカバー範囲は単に3D CAD関連にとどまらず、Dassault Systemes Solidworksが提供するサービスや教育支援活動なども広く含まれる。今回はSWW2016をfabcross視点で切り取った内容を、3回に渡って取り上げることにする。本記事では、基調講演の概要と展示について紹介する。

18回目の開催となったSWW2016は、セッション数200以上、出展社数130で、世界中から5000人を超えるエンジニア/デザイナーが集結し、過去最大規模となった。日本企業も9社が出展していたほか、日本から十数名のエンジニアが参加したという。SWW2016に参加することで、基調講演やセッションなどを通じて世界各地のユーザー事例、ものづくりの手法/スキルを習得できる。パートナー企業による展示ブースでは、SOLIDWORKSの特徴の一つである、SOLIDWORKSにアドインとして利用できる各種ソリューションの最新情報を得られる。そして、ここでしか得られないのが毎年秋にリリースされる次期バージョン(次は「SOLIDWORKS 2017」)の新機能に関する情報だ。次期バージョンについては、各国のDassault Systemes社員もSWWで初めて知るのだそうだ。

朝8:00、基調講演会場のオープンを待つ来場者たち。 朝8:00、基調講演会場のオープンを待つ来場者たち。

基調講演や展示などは2月1~3日に行われるが、全米はもとより世界各地から集まってくるユーザーやパートナー企業の多くは前日に現地入りし、イベント会場のカウンターで入場登録を済ませてネームプレートや資料などを受け取る。3日間とも1日の始まりは8時半の基調講演(そしてその前の7時から参加者向けの朝食の提供がある)だ。基調講演は横幅が30m近くはあろうというスクリーンが、横に3つ並んだ巨大なステージで行われた。朝、基調講演会場のドアが開いて5000人の参加者(大多数はエンジニア)が一斉に観客席に流れ込んでいくさまは壮観だ。多様なバックグラウンドを持つ数千人の3D CADエンジニアが一堂に集まる機会はそうそうない。

米Dassault Systemes SolidworksのCEOジャン・パオロ・バッシ氏(右)と、仏Dassault SystemesのCEOベルナール・シャーレス氏(左)。 米Dassault Systemes SolidworksのCEOジャン・パオロ・バッシ氏(右)と、仏Dassault SystemesのCEOベルナール・シャーレス氏(左)。

基調講演は毎日2時間ほどあり、何人もが入れ替わり登場するのでとてもすべては紹介しきれない。初日の講演にはDassault Systemes SolidworksのCEOであるジャン・パオロ・バッシ氏、親会社である(そしてハイエンド3D CAD「CATIA」を提供している)Dassault SystemsのCEOベルナール・シャーレス氏らが登場して、来場者にSOLIDWORKSへの支持を感謝すると共に、SOLIDWORKSブランドでこれから提供する予定の製品やサービスについて紹介した。基板設計ツールとして新たに加わる「SOLIDWORKS PCB」やクラウドストレージ「Xdrive」、自動デザイン生成ツール「Xdesign」、「SOLIDWORKS」のオンライントライアルエディションなどだ。

米Altiumと共同開発した「SOLIDWORKS PCB」が実現する機能。 米Altiumと共同開発した「SOLIDWORKS PCB」が実現する機能。

このうち特に注目したいのはXdesignとSOLIDWORKSオンライントライアルエディションだ。Xdesignは今年中にリリースを予定しているWebアプリケーションで、いくつかの条件を与えると自動的にそれを満たすデザインを提示するというもの。プレビューとして見せたデモンストレーションは、カメラの三脚の「脚」をXdesignが生成するというもので、脚の数と脚が接地する場所などを指定することで、脚のデザインを“トポロジー最適化”によって作り出す。作り出すデザインは非常に粗く、そのまま設計データとして利用するのではなく、プロダクトデザイナーがいろいろなデザインを試す手助けをするといった位置づけのようだ。

「Xdesign」のデモンストレーション。 「Xdesign」のデモンストレーション。

またSOLIDWORKSオンライントライアルエディションは、ローカルコンピュータ上で動くアプリケーションとして提供されてきたSOLIDWORKSのクラウドバージョンと言うべきもので、SOLIDWORKSのすべての機能をWebブラウザ上で提供するという。当初から14カ国語で提供する予定で、トライアルエディション(=試用版)という名前だが、クラウドベースの製品版として提供することも検討しているという。ライセンス形態については一切説明されなかったが、SOLIDWORKSを1カ月単位のような短期のサブスクリプションライセンスで提供することもあるのではないかと感じさせた。

1日の基調講演のゲストには、100ドルPCやHerman Millerのワークチェア「セイルチェア」などで知られるプロダクトデザイナーのイブ・ベアール氏や、マサチューセッツ工科大学メディアラボのCenter for Bits and Atomsセンター長で、“ファブラボの父”であるニール・ガーシェンフェルド氏が登場した。ガーシェンフェルド氏には個別インタビューできたので、別記事として取り上げる。 

マサチューセッツ工科大学教授で同メディアラボCenter for Bits and Atomsセンター長のニール・ガーシェンフェルド氏。 マサチューセッツ工科大学教授で同メディアラボCenter for Bits and Atomsセンター長のニール・ガーシェンフェルド氏。

基調講演のゲストは多彩で、2日目の基調講演のゲストには、Maker Faire Tokyoへの出展でおなじみの宇宙エレベーター協会から会長の大野修一氏が、3日目にはイノベーションを起こすため、「Google Lunar XPRISE」はじめさまざまな分野で大きな賞金のコンテストを実施しているX Prize Foundationの創設者兼CEOのピーター・ディアマンディス氏も登壇した。2日の基調講演では、SOLIDWORKSとしては初めて就学前~小学生の子ども向けに開発している教育アプリ「SOLIDWORKS for Kids」のデモンストレーションが行われた。発表をしたDassault Systemes Solidworksの教育市場/コミュニケーション担当ディレクター、マリー・プランチャード氏には、このアプリのことや同社の教育市場向けの取り組みについてインタビューしたので、別記事で詳しく取り上げる予定だ。

宇宙エレベーターについて説明する大野修一氏(右)。 宇宙エレベーターについて説明する大野修一氏(右)。

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