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FabCafe Nagoya(愛知県名古屋市)

日本全国のfabスペースを紹介するfabなび。今回紹介するのは愛知県の名古屋市営地下鉄久屋大通駅から徒歩3分の場所にある「FabCafe Nagoya」だ。

提供:FabCafe Nagoya 提供:FabCafe Nagoya

デジタル工作機械が設置されたカフェとして、世界12カ所に展開するFabCafe。渋谷、飛騨、京都に続く国内4番目の拠点となるFabCafe Nagoya は、2020年9月18日、南北1kmにわたる商業施設複合型の公園「Hisaya-odori Park」内に位置する店舗として、パークの開業とともにオープンした。

運営会社のFabCafe Nagoyaは、FabCafeを創業したロフトワークと、大垣共立銀行のシンクタンクOKB総研が共同で設立した組織。代表取締役の矢橋友宏氏は、ロフトワークのCOOとして他のFabCafe立ち上げに関わりながら、大学時代を過ごした名古屋での設立を長年切望していたという。ロフトワークが持つクリエイティブやデザインの力とOKB総研が培った地域ネットワークを組み合わせ、製造業や伝統工芸の盛んな名古屋や東海エリアにおけるハブとなり、FabCafe Nagoyaからものづくりの新たな潮流を生み出すことを目指して運営がスタートした。

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公園の芝生に面した好ロケーションや入りやすく広い空間、名古屋市民の新しいもの好きな感性にも後押しされ、オープン日には大勢の人が訪れた。内装や接客の雰囲気がWebで話題になり、急に来客が増えることもあったという。デザインやテクノロジーに関心を持つ利用者が多いFabCafeのなかで、ごく一般的なカフェ利用者の比率が高いことがFabCafe Nagoyaの特徴だ。

自由に座席やテーブルを配置できるカフェスペース。取材時も親子連れグループが車座を作り、にぎやかに談笑していた。 自由に座席やテーブルを配置できるカフェスペース。取材時も親子連れグループが車座を作り、にぎやかに談笑していた。

デパートを訪れるような幅広い客層に支えられる一方で、そうした一般のコンシューマーがクリエイティブに触れる場所としてFabCafe Nagoyaを機能させたいと語るのは、店長兼コミュニティマネージャーの斎藤健太郎さんだ。

「この地域は堅実な考え方をする方が多く、既存の事業に資するものが良しとされているように感じます。他方で、なんとなく面白そうでも役に立つか分からないものは、なかなか理解されにくい。その分からなさを楽しみながら、自分の価値観で面白いと思うものを選べる人を増やしていきたいんです」(斎藤さん)

ものづくりが産業として栄えた場所だからこそ、何を学び、どのような仕事につけば良いかが明確になっている東海地域。自身もアートプロジェクトに取り組む中で、新しいことの受容されづらさを感じた斎藤さんは、FabCafe Nagoyaをまだ世の中に浸透していないコンセプトや活動に触れる場所にするための施策を打ち出している。

斎藤さんはFabCafe Tokyo2階にあるMTRLから遠隔参加した。 斎藤さんはFabCafe Tokyo2階にあるMTRLから遠隔参加した。

誰でも手ぶらでデジタルなものづくりが楽しめる「簡単Fab体験キット」は、3つの機材から7アイテムを選べる充実ぶり。カラフルなアクリル板も飲食物をサーブするカウンターに置かれており、ふらっと訪れた人が気軽にものづくりに触れてもらうための工夫が随所にあふれている。

カウンター脇に置かれた、TOKYO ACRYLの端材。 カウンター脇に置かれた、TOKYO ACRYLの端材。
「簡単Fab体験キット」で製作できるものの例。 「簡単Fab体験キット」で製作できるものの例。
ワークショップで、レーザーカッターを使って作るピンホールカメラ(写真左)は、技術の奥深さに触れてもらうためにスタッフが開発した力作。 ワークショップで、レーザーカッターを使って作るピンホールカメラ(写真左)は、技術の奥深さに触れてもらうためにスタッフが開発した力作。

地域の学生やクリエイターを巻き込んだ活動にも精力的に取り組んでいる。東海地域で建築を学ぶ学生で構成されるデザインチームND3MはFabCafe Nagoyaとコラボレーションし、店舗のオープニングに合わせた参加型インスタレーションや、イベントでの什器を製作した。

コロナ禍でキャンパスに行けなくなった大学生にとって、FabCafe Nagoyaは研究や実験、あるいは雑談を楽しむための場所としても機能していたという。

渋谷を拠点に活動するZ世代の落語グループを招いて行った「“YOSE Nagoya” – by Z落語」。会場装飾をND3Mが担当し、テンセングリティ構造(張力を用いて部材を接触させずに安定させる構造)を生かした高座と装飾を製作した(提供:FabCafe Nagoya) 渋谷を拠点に活動するZ世代の落語グループを招いて行った「“YOSE Nagoya” – by Z落語」。会場装飾をND3Mが担当し、テンセングリティ構造(張力を用いて部材を接触させずに安定させる構造)を生かした高座と装飾を製作した(提供:FabCafe Nagoya)
ND3Mのメンバーであり店舗スタッフでもある池本さんがレーザーカッターで再現した有松絞り(布を紐でくくって染めることで特徴的なしわが生じる名古屋の伝統的な染物)のテクスチャ。3Dスキャンしたデータから製作されている。 ND3Mのメンバーであり店舗スタッフでもある池本さんがレーザーカッターで再現した有松絞り(布を紐でくくって染めることで特徴的なしわが生じる名古屋の伝統的な染物)のテクスチャ。3Dスキャンしたデータから製作されている。

その他にもオンラインかオフラインかを問わず、さまざまなジャンルのイベントを開催し、「説明しづらいもの」や「未分化なもの」を精力的に発信し続けているFabCafe Nagoya。今後はクリエイターの考え方を広げるためのグッズ展開にも力を入れていくという。

名古屋という土地で、多くの人に親しまれながら、新しい価値を提案していく。機能的な価値だけでない、チャレンジ精神あふれる何かが生まれるハブとして、日常と非日常をブリッジする場所になっていくと感じられた。

店舗でお話を伺った居石有未さん(右)と、アシスタント・ディレクター(学生インターン)の市川慧さん(中央)、Fabクルーの池本しょうこさん(左)。  店舗でお話を伺った居石有未さん(右)と、アシスタント・ディレクター(学生インターン)の市川慧さん(中央)、Fabクルーの池本しょうこさん(左)。 

概要

所在地 〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内三丁目6番18号先
RAYARD Hisaya-Odori Park内
営業時間 9:00〜20:30(L.O 20:00)
基本定休日なし・年末年始 休み
URL https://fabcafe.com/jp/nagoya/
料金 レーザーカッター「speedy 360」
Drop-in利用:1100円/ 15分  予約利用:4400円/ 45分

UVプリンター「UJF-3042MkII」
Drop-in利用: 1100円/ 15分  予約利用:4400円/ 45分

デジタル刺繍ミシン「TAJIMA 彩 -SAI-」
予約利用のみ:¥3300/1時間

※ 価格は全て税込
※ 3Dプリンターのサービス提供は行っていない

機材

レーザーカッター「trotec speedy 360」 レーザーカッター「trotec speedy 360」
UVプリンター「ミマキエンジニアリング UJF-3042MkII」 UVプリンター「ミマキエンジニアリング UJF-3042MkII」
デジタル刺繍ミシン「TAJIMA 彩 -SAI-」 デジタル刺繍ミシン「TAJIMA 彩 -SAI-」
3Dプリンター「ANYCUBIC Chiron」(通常貸し出しは行っていない) 3Dプリンター「ANYCUBIC Chiron」(通常貸し出しは行っていない)

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