特別寄稿:フロンティアメイカーアメリカファブ施設紀行
サンフランシスコに行って気づいた日本とアメリカの良さ
2/20
- ホームセンターへ買い物
- version3の作成開始
- 塗装の練習を兼ねたアンプの作成開始
NoiseBridgeは、想像していた華やかな空間とは真逆の、社会の隅に追いやられた吹き溜まりのような場所でした。ただ、お金を払う代わりに施設がきれいなTechShopと比べると、一回り小さいくらいの規模でありながら、利用料金がかからないというのは本当に素晴らしいです。NPOの強みだと思いました。
2/21
- 金属加工の講習を受ける(再履修)
- Arduinoのプログラミング
Arduinoのような、オープンソースハードウェアの利便性について考えさせられた一日でした。アナログデータのやり取りと、デジタルデータのやり取りの仕組みを教わったのですが、すごくよく出来ています。きっと、マイコンの扱いに長けた人なら自分でその仕組みを作れると思いますが、Arduinoはその辺りを上手に“架け橋”として初心者を支えています。教育的な目線も無ければ作ることのできない傑作と言えます。また、ArduinoもRasberry PiもInstructablesも、自分が興味のあるものはみんな、“高等な技術がデザインでくるまれている”。これが、技術とデザインが織りなすプロダクトの最終ゴールだと思いました。
2/22
- 買い物
- LEDBoxの制作に着手
- version3の完成
2/23
- LEDBoxの完成
- TechShopスタッフKristofと、LED×アンプProjectの構想の話し合い
2/24
- サンノゼへ移動、九州大学カリフォルニアオフィスの松尾所長とお話をする
- 今後のスケジュールを立てる
2/25
- 田中浩也先生とコンタクトをとる
- スプレーの購入
- LEDBoxの続き
- Arduinoを使ったLEDテープの発光試験
2/26
- LED×アンプversion1の完成
- レーザーカッターの講習を受ける
- アクリル板の切断
2/27
- 3Dプリンタの講習を受ける
2/28
- 3Dプリンタの開始
- アクリルで六面体を作り、LEDを中に仕込んでさまざまなパターンを試す
- アクリル六面体によるイルミネーション実験。これを基により大きなLEDBoxを作る
3/1
- Arduinoを用いた、イルミネーションパターンの研究
デジタル入力はOn/Offのみで品がないので、アナログ入力を使う事にしました。実際用いているスケッチの内容は初歩の初歩ですが、Arduinoの講習で、AnalogWriteとDigitalWriteの仕組みを知ったがために、アナログ入力というアイデアが出ました。やはり、Arduino自体をあれこれいじってみて工作につなげるのもいいけれど、人と違ったものを創るためには、そういった作る事を前提にした知識の吸収も必要だと思いました。
3/2
- アンプの性能を向上させるため、どこから手を付ければいいのかをTechShopのスタッフと話し合う
- LEDイルミネーションを正面だけでなく、側面からも見えるよう4平面に展開
- アクリル板のレーザーカット
- アクリル板に曇り加工のスプレー
3/3
- TechShopスタッフに、LEDのデータシートの使い方や、適切な抵抗の選び方について教えてもらった
- LED×アンプversion2の完成
はじめは、1点の光は美しくないと思って、複数の照射角度の広いLEDを使いたかったのですが、実際アクリルを曇らせて、少し離したところから光らせると、これはこれで、幻想的ないい味が出ました。ということで、引き続き 視野角の小さいワンポイントのLEDの光を使うことに。これがものづくりの面白さだと思いました。
TechShopのスタッフは、困っていたら技術的な内容について惜しみなく手伝ってくれます。(TechShopの利用料以外に)特別な料金は必要ありません。申し訳ないと思うくらい、スタッフとの会話で膨大な情報、知識を手に入れました。こういった場だからこそ、LEDを適切に光らせるための知識のみならず、最大電流やShift Registorの仕組み、PWM(パルス幅変調)の仕組みなど、関連した知識を根こそぎ獲得できます。FabLabでも、こういった助け合い(今回は一方的ですが)を大事にするといい空間になりそうだと思いました。
3/4
- Electronics meetupに参加
- ギターアンプversion4の完成
- 3Dプリンタ出力の失敗
- Wood shop SBUの講習を受ける
Electronics meetupでは、さまざまな年齢の人が10名ほど集まって、電子工作に関して自分のしている事や興味について話し合いました。Wiiヌンチャクを使った電子楽器のプロジェクトに取り組んでいる人の話が最も印象的でした。とても楽しかったし、いろんなヒントをもらいました。具体的には、今のLED×アンプが完成したら、ギターの入力だけでなく、色に応じて音階を表示するギターチューナーとして使えるよう制御を工夫すると面白い、ということ。ただこういう集まりは日本でもわりと頻繁に行われているなとも思いました。けれど、参加費用がないというのはとても重要だと思います。やはり出来上がったものを持っていると、それを中心に話が広がって面白いです。
3/5 サンフランシスコ最終日
- アクリル板のカット
- 路上に出て演奏をしてみる
最初、地下鉄の入り口で弾いた時には、音量は十分でした。場所のせいかと思い地上でも弾いたのですが、そちらでもよく聴こえました。(車がうるさいと聴こえない)やりたい放題のアメリカでそうなのだから、騒音規制の厳しい日本ならなおさら、これ以上音量を追求する必要はないと思いました。
面白いのは、みんな不思議そうな目で足下ばかり見てきます。アンプの音質と、見た目のせいだと思いました。
お金こそ1セントも儲からなかったものの、途中で2度声をかけられました。1度目はホームレスに“carry on!”と励まされ、2度目はがっしりした体つきの裕福そうな黒人2人に、“What kind of music are you playing?”と聞かれました。“Japanese music”と答えていくつかやりとりした後、自分で作ったアンプだと言ったら“Wow, cool!”とものすごく興奮していました。その2人とは仲良くなり、握手をして別れました。また若いアメリカの青年も興味深そうにニコニコしながらこちらを眺めていたこともあり、手応えを感じながら演奏を終えました。
一番感じたのは、やっぱりアンプの形状が違うとみんな興味を持つ、ということです。この時はまだ手作りの小さなアンプで、個人の趣味の枠を出ていませんが、あと何度か改良を重ねれば、必ず途中で決定的な特色を持たせる事ができる。だから作り続けていたいし、その、画期的なアンプに化ける瞬間をこの派遣中に経験したい。そう思いました。
またこの日はサンフランシスコ最終日で、21日間ほぼ通い続けたTechShopに別れを告げました。ギターアンプを通じて、スタッフとはとても仲良くなり、最後に記念に写真を撮りました。
(第3回に続きます)