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メイカースペースの作り方

教室でもサークルでもない、学生が何かを成し遂げるため大学内ファブラボ

日本全国で増え続けるメイカースペースのあり方を探る連載の第3回は教育現場におけるメイカースペースについて紹介したい。

メイカースペースと学校の親和性は非常に高い。というのも、世界中にネットワークを持つファブラボはマサチューセッツ工科大学メディアラボの研究活動の一環から生まれたもので、「How to make(Almost)Anything」(ほぼあらゆるものを作る方法)という講座におけるラピッドプロトタイピングの場として機能している。また、海外ではファブラボを設置している教育機関も多く、アメリカや中国など政策にラピッドプロトタイピングとメイカースペースが組み込まれている例もある。

過去の記事でも紹介したとおり、教育機関でのメイカースペースは非営利活動が主なので、採算性を問われないというメリットがある。一方で、売り上げに代わる実績を積みアピールしていくことで存在意義を訴えていくという地道な活動が求められる。これは同じく非営利で運営される企業内メイカースペースにも言えることだ。

空きスペースにできたラボが学生を変えた

神奈川大学内の空きスペースを改装して立ち上げた「ファブラボ平塚」。利用者の2割から3割は学外のユーザーで、近隣の大学生らも訪れることがあるという。 神奈川大学内の空きスペースを改装して立ち上げた「ファブラボ平塚」。利用者の2割から3割は学外のユーザーで、近隣の大学生らも訪れることがあるという。

神奈川大学湘南ひらつかキャンパス内にある「ファブラボ平塚」は、経営学部 国際経営学科准教授の道用大介さんが2014年に学生らと立ち上げた。キャンパスの廊下にあった、物置のようなスペースをラボに転用した。学外に施設を開放する事例はそれまで無く、着想からオープンまで1年半もの期間を要した。

元来、学生のための大学の施設を学外にも開放することはハードルが高い。ファブラボ平塚の場合は最寄り駅から遠く、来校する人が限られるだろうというもくろみに加え、地域貢献に理解のある教職員が非常に多かったことがオープンを後押ししたという。事実、オープン後は地元で働く企業人から個人事業主、リタイアしたシニアも含め幅広い層の地域住民がファブラボに訪れるようになった。

道用大介さん:神奈川大学経営学部 国際経営学科准教授/ファブラボ平塚代表 道用大介さん:神奈川大学経営学部 国際経営学科准教授/ファブラボ平塚代表

大学側からの了承を取り付けたとはいえ、予算は限られていた。もともと何もなかった場所をDIYでラボにしただけであり、当初は換気設備どころか空調も無かった。夏は暑く冬は底冷えのする寒さだったが、自分たちでスペースを立ち上げるという「0から1」の興奮が勝っていたと道用さんは当時を振り返る。

「立ち上げ期はわからないことだらけだったので、私も学生も試行錯誤しながら運営していました。そのおかげもあって学生スタッフの知識やスキルは非常に高かった。その後に続く学生のロールモデルのような存在にもなっています」

大学内のメイカースペースの利点としては、運営スタッフとして吸収力の高い年代の学生を巻き込める点にある。つまり、彼らの自主性や創造力、好奇心の強さが経験の乏しさを凌駕することがあり、ファブラボ平塚もそうした一期生の活躍が運営の継続性にも大きく寄与した。

3Dプリンターやレーザーカッターだけでなく、UVプリンターや木材をカットできるCNCもある。取材日も学生が黙々と制作にいそしんでいた。 3Dプリンターやレーザーカッターだけでなく、UVプリンターや木材をカットできるCNCもある。取材日も学生が黙々と制作にいそしんでいた。

「後に続く学生にとっては先輩たちを見て、『ああいう風になれるんだ』という憧れが強いモチベーションになっています。また、地元を拠点にするデザイナーや、社会課題を持ってここでものづくりをしに来る人たちからの刺激を受けて、クリエイティブなことをしたいという気持ちにさせてくれるというのは、大学内にファブラボを置く大きな利点になっています」

ラピッドプロトタイピングができる環境と、そこに集う多様なスキルとアイデアを持った人たちに影響を受けて、単純に何かを作るためではなく、何かを成し遂げるための場所としてファブラボを捉える学生が出はじめたことは大きな成果だったという。

ある日、木製のサーフボードが作りたいと、1人の学生がファブラボを訪れた。当時、神奈川大学に在籍していた石川拳大さんはサーフィンの学生チャンピオンで、後にオリンピック強化選手に指定される実力の持ち主だった。彼はサーフボードの制作を通じて自然に対する敬意や環境問題を発信したいという思いがあり、学内で唯一工作機械が自由に使えるファブラボに目を付けた。道用さんらの応援もあり、最終的にはドキュメンタリー映画としてプロジェクトを進めることになり、制作費はクラウドファンディングで調達、木製サーフボード制作をファブラボでサポートした。

石川拳大さんらが制作したドキュメンタリー映画「OCEANTREE - The Journey of Essence -」の予告映像。

他にも3Dモデリングのスキルを身に付けた学生スタッフが、3Dモデリングのコンテストで上位に入賞したことを縁に就職先が決まったケースや、ベンチャー企業と連携して起業を準備している学生など、ファブラボをきっかけとして成長し、巣立っていった学生もいる。

こうした学生らのストーリーが後輩たちに受け継がれていくのは、大学ならではの利点だろう。

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